米の値段が下がってきたといっても「コシヒカリ」をはじめとする銘柄米の価格は、まだまだ高く、5キロ5000円を超える商品も多い。2024年の同時期と比べると、2倍近い価格だ。そもそも、2000円前後で販売している随意契約の備蓄米を実際に店頭で見た人、さらには購入した人は、まだまだ少ないはずだ。安価な備蓄米が国民に行きわたって、家計が助かっている、とまではいい難い。
そこで、小泉農水大臣は中小の小売業者に向けて、第2回の随意契約米の放出を決めた。第1回目の放出で売れ残った古古古米が対象で、5月30日から受け付けが始まり7月2日時点で、中小の小売業者42社、3366トンが決まっている。精米ができる米穀店75社、4882トン。合わせて117社、8248トンが新たに放出されることが確定している。
この中には、セブン-イレブン・ジャパン、ファミリーマート、ローソンも含まれる。農水省は「コンビニは確かに流通大手だが、日常的に販売している米の数量は極めて少ない。そのため、1回目の備蓄米の放出対象から外し、2回目に米の中小の業者として契約を結んだ」と説明している。店頭価格は5キロ1800円ほどの想定だ。
しかし、第1回目の随意契約米の受け渡しもまだ終わっておらず、スムーズに中小の業者や米穀店が入荷できるかどうか、疑問もある。ファミリーマートとローソンは6月5日から、セブン-イレブンでは6月17日から、それぞれ備蓄米の販売を始めているが、なかなか目にすることがないのが実情だ。さらに、小泉農林水産大臣は6月20日から、外食や弁当業者、給食の事業者にも随意契約の対象を広げ、2020年に収穫した古古古古米の販売にまで踏み切っている。
これから秋にかけて2025年産の新米が市場に出回ってくるが、農林水産省では「米の増産を図っているので大丈夫だ」と話す。ただ、2024年も「新米が出回れば大丈夫」と自信たっぷりだったが、結果として米価は高騰するばかりだった。もう備蓄米は残り少ない。5キロ2000円前後のコメがいつまでもあるわけはなく、米国や台湾などからの輸入米も急増している。低価格ゾーンに輸入米が定着し、銘柄米は高価なままで米の市場が二極化する可能性は十分にある。果たして小売業者たちの奮闘により、銘柄米の価格も誰でも安心して買えるまで下がり、安定するのだろうか。そして、米農家が適正な利益を得られる価格に落ち着くのか。先が見通しにくい状況だ。
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。
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単なる「値上げ」は客離れを起こす! 「コメ離れ」なのに収まらないコメ高騰にどう立ち向かうべきかCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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