なぜ備蓄米は「一瞬」で店頭に並んだのか 各社がスピード販売できた背景長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/5 ページ)

» 2025年07月03日 15時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

ドンキの「ユニークな取り組み」

 PPIHは、傘下にドン・キホーテ、ユニーなどを有する流通グループだ。1万5000トンを申請し、随意契約を結んでいる。6月1日にMEGAドン・キホーテ大森山王店で1800袋を販売すると、即日完売した。価格は5キロ2139円。同社ならではのスピード感を生かし、備蓄米受託事業者や全国の精米業者の協力もあって、備蓄米倉庫から精米工場まで直接運んでいるため、迅速に店頭販売できた。

ドンキの動向は?

 同社の広報は「日本全国に店舗網を持っており、そのインフラをフル活用して消費者に備蓄米を届けることこそ、“使命”と考えて応募した」と振り返る。PPIHでは販売方法に一工夫している。同社のアプリ「majica」会員限定で、しかも1人1点限り、かつ週1回の購入に制限しているのだ。より多くの消費者に行きわたるような仕組みを考案した。

PPIHの備蓄米販売の告知(出所:majica公式ページ)

 1人1点限りに購入を制限する動きは小売全体にあるが、アプリを使い、より踏み込んだ形で公平性を担保したのが、同社の独創性といえる。同社にも契約分の全量がまだ届いておらず、届き次第、精米して店頭に並べている。

majicaアプリによる随意契約の備蓄米購入の仕方(出所:majica公式ページ)

 こうして見ていくと、できるだけ早く消費者に安価な米を届けたいという使命感が、各社を動かし、協力会社を巻き込んで早期の販売につながったといえる。アイリスオーヤマは自社の精米工場、イオンは自社の物流網、イトーヨーカ堂は協力会社との結束、PPIHは米の公平な分配を強調していたのが印象的だ。同じ業態で顧客本位の販売は共通していても、店舗運営の考え方の違いが見えたのは興味深い。

 なお、販売だけなら楽天がECでもっと早かった。5月29日に随意契約米の初回分を発売し、即日完売している。発送は6月7日からで、価格は5キロで2138円。全部で1万トンの契約となっている。

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