なぜ備蓄米は「一瞬」で店頭に並んだのか 各社がスピード販売できた背景長浜淳之介のトレンドアンテナ(1/5 ページ)

» 2025年07月03日 15時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

著者プロフィール

長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)

兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。


 政府備蓄米の放出が続き、高騰した米の価格が下落を始めている。農林水産省によれば、6月9〜15日にスーパーで販売した5キロ当たりの平均価格は3920円と、約3カ月ぶりに4000円を割った。

 さらなる備蓄米の放出が進んでいること、江藤拓前農林水産大臣のときに放出した備蓄米が店頭に出回ってきたことも背景にあるが、それだけではない。米の価格高騰に苦しむ消費者の期待に応えるべく、政府と随意契約を結ぶや否や、電撃的に店舗に並べたスーパー、ホームセンターの努力もあった。

 3月から行っていた備蓄米の放出では、JA全農(全国農業協同組合連合会)が約95%を落札。JAなどの集荷業者から小売店までは、最大5次までの卸売業者を経由するといわれており、流通過程で目詰まりを起こし、時間がかかることが問題視された。

備蓄米のスピード販売をしたアイリスオーヤマ(出所:同社公式X)

 しかし、5月21日に小泉進次郎氏が農相が就任してからは、大手小売業者へと直接販売する随意契約に切り替わった。店頭には予想よりはるかに早くコメが並び、5月31日にはイトーヨーカ堂とアイリスオーヤマ、6月1日にはイオンとPPIH(パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)が、販売を始めている。

 備蓄米は玄米の状態で政府が委託した全国の民間業者の倉庫で保管しており、精米をしないと店頭に出せない。通常、精米工場の繁忙期は9〜10月であり、イレギュラーで生産を増やすのはもちろん、ドライバー不足の折、精米工場へ輸送するのも容易でないはずだ。小泉農相も驚く電光石火の備蓄米販売はなぜ、実現できたのだろうか。

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