「売れる」は禁句──営業会議で使うと“組織が腐る”言葉の正体「キレイごとナシ」のマネジメント論(3/5 ページ)

» 2025年07月07日 08時00分 公開
[横山信弘ITmedia]

「売れる」と「売る」の決定的な違い

 問題は「売れる」が自動詞だということ。自動詞には目的語がなく、主語も曖昧になりがちだ。

 「この商品が売れるにはどうすればいいか」

 この場合の主語は、商品である。一方「売る」は他動詞だ。必ず主語が必要であり、その主語は人でなければならない。

 「私がこの商品を売るには」

 「田中さんがこのエリアで商品を売るには」

 このように表現すると、責任の所在が明確になる。誰が行動するのか、誰が結果に責任を持つのかがはっきりするのだ。

 言葉の違いは思考の違いを生む。「売れる」という表現を使い続けている限り、無意識のうちに他責思考が染み付いてしまう。商品が悪い、タイミングが悪い、市場が悪い。そのような発想から抜け出しにくくなる。

 自動詞と他動詞の使い分けを意識するためにも、主語をきちんと使うべきだ。特に個人名を主語にする。そうすることで、具体的で責任感のある表現になる。

主語を変えるだけで組織が変わる理由

 言葉が思考を作り、思考が行動を作る。この原理を理解すれば、なぜ言葉づかいの変更が組織変革につながるのかが見えてくる。

 営業会議で使う言葉を変えた結果、以下のような変化が起きた。

責任感がアップした

 「私が売る」という表現により、個人の責任意識が格段に高まった。誰かが買ってくれるのを待つのではなく、自分が売りに行く姿勢に変わったのだ。

具体的なアクションをするようになった

 主語が明確になることで、誰が何をするのかがはっきりした。曖昧な戦略論ではなく、具体的なアクションプランが生まれるようになった。

成果に対する当事者意識が芽生えた

 「売れない」理由を外部要因に求めるのではなく、「売る」ために自分たちに何ができるかを考えるようになった。

 このように、たった一つの動詞を変えただけで、組織全体の思考パターンが劇的に変化した。言葉の持つ力は想像以上に大きい。日常的に使っている表現が、知らず知らずのうちに組織文化を作り上げているのだ。

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