問題は「売れる」が自動詞だということ。自動詞には目的語がなく、主語も曖昧になりがちだ。
「この商品が売れるにはどうすればいいか」
この場合の主語は、商品である。一方「売る」は他動詞だ。必ず主語が必要であり、その主語は人でなければならない。
「私がこの商品を売るには」
「田中さんがこのエリアで商品を売るには」
このように表現すると、責任の所在が明確になる。誰が行動するのか、誰が結果に責任を持つのかがはっきりするのだ。
言葉の違いは思考の違いを生む。「売れる」という表現を使い続けている限り、無意識のうちに他責思考が染み付いてしまう。商品が悪い、タイミングが悪い、市場が悪い。そのような発想から抜け出しにくくなる。
自動詞と他動詞の使い分けを意識するためにも、主語をきちんと使うべきだ。特に個人名を主語にする。そうすることで、具体的で責任感のある表現になる。
言葉が思考を作り、思考が行動を作る。この原理を理解すれば、なぜ言葉づかいの変更が組織変革につながるのかが見えてくる。
営業会議で使う言葉を変えた結果、以下のような変化が起きた。
「私が売る」という表現により、個人の責任意識が格段に高まった。誰かが買ってくれるのを待つのではなく、自分が売りに行く姿勢に変わったのだ。
主語が明確になることで、誰が何をするのかがはっきりした。曖昧な戦略論ではなく、具体的なアクションプランが生まれるようになった。
「売れない」理由を外部要因に求めるのではなく、「売る」ために自分たちに何ができるかを考えるようになった。
このように、たった一つの動詞を変えただけで、組織全体の思考パターンが劇的に変化した。言葉の持つ力は想像以上に大きい。日常的に使っている表現が、知らず知らずのうちに組織文化を作り上げているのだ。
部下に「仕事は終わってないですが定時なので帰ります」と言われたら、どう答える?
新入社員「Web会議でカメラオンにする必要なくないですか?」 上司のあなたはどう答える?
部下から「給料を上げてください」と言われたら、上司のあなたはどう返す?
「お前はどうしたい?」しか言わない上司の自己満足 「考えさせる風」コミュニケーションが招く悲劇
部下が相談する気をなくす、上司の無神経な「たった一言」Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング