この原理は部下育成にも当てはまる。多くの上司が犯している間違いがある。それは「育つ」という自動詞を使うことだ。
「なかなか育たない」
「成長してくれない」
このような愚痴をこぼす上司は多い。しかし問題は部下にあるのではなく、上司の言葉づかいにある。
正しくは「育てる」「成長させる」という他動詞を使うべきだ。
「私が育てる」
「あの課長が育てるべきだ」
「私たちが成長させる」
主語を明確にすることで、育成責任がはっきりする。部下が成長しないのは、部下の問題ではなく、育てる側の問題だということが見えてくるのだ。
優秀なマネジャーほど、このような言葉づかいを自然に身に付けている。部下の成長を他人事として捉えるのではなく、自分の責任として受け止めているからだ。
主語を変えることによって見えてくる世界、そして自分の覚悟。それが組織の力を大きく左右する。言葉づかいひとつで、組織の運命は大きく変わるのである。
では、具体的にどのような言葉を変えればいいのか。実践的な変換表を示そう。
組織全体で導入するには、以下の段階的なアプローチが重要だ。
まずは管理職が率先して言葉づかいを変えよう。会議での発言、部下との面談、全ての場面で意識的に他動詞を使う。
営業会議や部門会議で、自動詞が出たらその場で他動詞に言い直そう。最初は違和感があるが、継続することで習慣化される。
朝礼、廊下での立ち話、メールでのやりとり。あらゆる場面で主語を明確にした表現を心掛けよう。
同僚同士で言葉づかいをチェックし合う習慣を身につけよう。月に一度、言葉づかいの振り返りを行い、改善点を共有するのもいい。
この製造業の会社も、3カ月かけて段階的に導入した。最初の1カ月は抵抗もあったが、2カ月目には自然に他動詞を使えるようになり、3カ月目には組織全体の雰囲気が劇的に変わったという。
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