「売れる」は禁句──営業会議で使うと“組織が腐る”言葉の正体「キレイごとナシ」のマネジメント論(4/5 ページ)

» 2025年07月07日 08時00分 公開
[横山信弘ITmedia]

部下育成でも同じ原理が働く

 この原理は部下育成にも当てはまる。多くの上司が犯している間違いがある。それは「育つ」という自動詞を使うことだ。

 「なかなか育たない」

 「成長してくれない」

 このような愚痴をこぼす上司は多い。しかし問題は部下にあるのではなく、上司の言葉づかいにある。

 正しくは「育てる」「成長させる」という他動詞を使うべきだ。

 「私が育てる」

 「あの課長が育てるべきだ」

 「私たちが成長させる」

 主語を明確にすることで、育成責任がはっきりする。部下が成長しないのは、部下の問題ではなく、育てる側の問題だということが見えてくるのだ。

 優秀なマネジャーほど、このような言葉づかいを自然に身に付けている。部下の成長を他人事として捉えるのではなく、自分の責任として受け止めているからだ。

 主語を変えることによって見えてくる世界、そして自分の覚悟。それが組織の力を大きく左右する。言葉づかいひとつで、組織の運命は大きく変わるのである。

実践的な言葉の変換表と組織への導入方法

 では、具体的にどのような言葉を変えればいいのか。実践的な変換表を示そう。

営業・売り上げ関連

  • 売れる→売る
  • 決まる→決める
  • 伸びる→伸ばす
  • 成果が出る→成果を出す

人材育成関連

  • 育つ→育てる
  • 成長する→成長させる
  • 覚える→覚えさせる
  • スキルが身に付く→スキルを身に付けさせる

組織運営関連

  • 改善される→改善する
  • 問題が解決する→問題を解決する
  • チームワークが良くなる→チームワークを良くする

 組織全体で導入するには、以下の段階的なアプローチが重要だ。

リーダー自身が実践する

 まずは管理職が率先して言葉づかいを変えよう。会議での発言、部下との面談、全ての場面で意識的に他動詞を使う。

会議で徹底する

 営業会議や部門会議で、自動詞が出たらその場で他動詞に言い直そう。最初は違和感があるが、継続することで習慣化される。

日常会話でも積極的に使う

 朝礼、廊下での立ち話、メールでのやりとり。あらゆる場面で主語を明確にした表現を心掛けよう。

相互にフィードバックする

 同僚同士で言葉づかいをチェックし合う習慣を身につけよう。月に一度、言葉づかいの振り返りを行い、改善点を共有するのもいい。

 この製造業の会社も、3カ月かけて段階的に導入した。最初の1カ月は抵抗もあったが、2カ月目には自然に他動詞を使えるようになり、3カ月目には組織全体の雰囲気が劇的に変わったという。

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