相次ぐ閉店――ロフトとハンズ、巨大店舗が直面した”壁”とその“打ち手”とは?後編(1/2 ページ)

» 2025年07月14日 09時00分 公開

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 雑貨大手「ロフト」「ハンズ」の巨大雑貨ビルが相次ぎ姿を消している。

 2021年10月には池袋サンシャイン60通りの「東急ハンズ池袋店」(当時)が完全閉店、2025年4月30日には大阪梅田茶屋町の「梅田ロフト」が近隣百貨店「阪神梅田本店」への移転にともない、35年の歴史に一旦幕をおろした。

 記事前編では、ロフトとハンズ、両社の創業の経緯を見てきた。後編では、両社の大型店舗が抱えてきた課題に焦点を当て、これをどう乗り越えようとしているのか、新たな試みを見ていく。

「床効率の悪さ」課題 小型化に舵切ったロフト

 ロフトは、高度経済成長期に誕生した地域一番店級の百貨店やファッションビル跡に大型店を構えたため、常設店を持たない新興ブランドのPOP-UPや新進気鋭のアニメ・漫画・イラストレーターといった各種IPコンテンツとのコラボを業界に先駆け展開する土壌となり、百貨店同様の館のランドマーク的価値向上、トレンド文化の情報発信館としての確固たる地位実現に貢献した。

 一方、これら大型店の売り場面積は、取扱商品の拡大や他専門店への転貸を進めてもなお過剰であり、先発のハンズを上回る「店舗老朽化」と「床効率の悪さ」の対策に追われることとなった。

2005年3月の八尾西武リニューアルにあわせて開店した「八尾ロフト」。2017年2月の西武撤退、同年9月のザイマックス系新施設「リノアス」開業後も有力専門店として営業中だ(筆者撮影、以下同)

 そのため、ロフトは入居施設の建替えや再整備にあわせ、館内や近隣施設への移転をともなう店舗規模の適正化を順次実施していく。

 2004年のJR東日本系駅ビル「ルミネ川越」への既存店移転を機に、小型店を新たに立ち上げ、2007年2月にはミニロフト(300平方メートル級店舗)1号店として「丸の内ロフト」を開店。

 2010年9月には、イトーヨーカドーと共同開発するかたちで新業態「タノシア」1号店を開店(2011年ロフトFCに転換)するなど、グループ内外の企業との提携と、小型店の全国展開による事業拡大に舵を切っていく。

コスメなど特化型業態に注力 ブランドイメージ刷新したハンズ

 ハンズの大型店も、ロフトと比べて新築店舗主体で他業態からの転換店舗が少なかったものの、創業以来続くホームセンター業態に構造的課題をかかえていた。

 ハンズを含むホームセンター業界を取り巻く環境は、1974年3月施行の大規模小売店舗法(大店法)が段階的に緩和したことで激変する。

 同業のイオン系「ケーヨーD2」「ホーマック」(ともに現DCM)や、ベイシア系「カインズ」といった郊外型平屋建てを得意とする競合が1万平方メートル級の大型店や、衣食住をフルラインでそろえる複合商業施設を立ち上げ、業界再編の主役に躍り出るなど影響力を急速に高めた。

 ハンズの大型店は、都市型としては国内最大規模であるが、成熟したDIY市場で生まれた上級者の資材需要を満たすことは困難であり、ロフトと比べ、消費の主役といわれる女性やファミリー層の獲得にも難航。床効率や仕入調達面で高コスト体質にあった。

 そのため、ハンズは2000年4月の現ららぽーとTOKYO-BAYへの鞄特化型新業態「outparts」の開店を皮切りに「ハンズプロデュースの専門店」の開発を模索する。

 2003年9月の川崎店開店を機に、創業以来続く「全店独立型運営」と、全国チェーン化以来続く全店多層型店舗からの脱却を図り、近隣大型店を母店とする「エリアブロック運営」とワンフロア型店舗を本格展開するようになる。

 その後も2004年11月には提案型ルームセンター「homey roomy」を開店。主力業態に発展的統廃合をするなど、DIY系商材を取り扱わないハンズがみられるようになった。

 2008年6月には、コスメ雑貨特化型業態「hands be」1号店を開店。

 首都圏を中心に増加傾向にあった駅ビル向けに、トレンドに敏感な20〜30代女性や公共交通利用者を主要客層に定めた業態を拡大し、主力業態に逆輸入することで、男性向け都市型ホームセンターとしてのブランドイメージを塗り替えた。

 ハンズは集大成として、2009年6月の新コンセプト「ヒント・マーケット」を掲げて、渋谷店の全面リニューアルを実施。各店舗の販売員が仕入権限を有する仕入販売員制度から本部主導の仕入れに移行し、資材やクラフト系商材の取り扱いを全社的に縮小。ロフト同様に、雑貨主体のセレクトショップへの転身を成し遂げることとなった。

2021年11月に「心斎橋パルコ」に移転新装開業した「東急ハンズ心斎橋店」。開業当初は巨大雑貨ビル時代の看板を用いた「THANKYOU」アートも。

 この過程で渋谷店と同じくスキップフロアを特徴とした横浜店は、近隣のファッションビルに移転。三宮店は完全閉店となり、両店舗跡は独特な構造が災いとなり、築年数20〜30年で解体という憂き目にあったが、ローコスト運営転換に向けた施策が功を奏し、2008年3月期からコロナ禍前の2020年3月期まで営業利益は黒字を維持していた。

 両社による巨大雑貨ビルの縮小移転を始めとする業態改革をめぐって、最盛期には10万近いアイテム数をそろえた旗艦店級の巨大雑貨ビルを支持してきた顧客や識者からは、没個性化を指摘する主張もみられるが、業界再編の動きや価格競争力の高いECとの競合も背景にあることは忘れてはならない。

ロフト・東急ハンズの移転前・移転後の店舗面積比較(両社公式データより筆者作成)
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