インバウンド消費額が全国最低「9000円」の奈良、なぜ?(3/3 ページ)

» 2025年07月14日 08時42分 公開
[産経新聞]
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各地域を磨き上げ

 奈良県は昨年5月、訪日客への訴求力や観光客の満足度を高めるため、初代観光庁長官の本保芳明氏を本部長とする県観光戦略本部を設置。奈良観光の現状について、少ない宿泊客に伴う観光消費額の低迷を「安い」、滞在時間が短く深い魅力を知ってもらえないことを「浅い」、奈良公園周辺に集中していることを「狭い」と問題提起し、打開策を模索する。

photo 夕方になると人通りが減る奈良公園そばの歩道=奈良市

 方向性としては、県内の各地域を観光地として磨き上げ、地域にフォーカスした実効性のある取り組みを推進するとしている。

 本部の会議は過去に2回開催され、県内の観光消費額を令和元年の1807億円から12年度に2倍超の4200億円とする壮大な目標を立てているが、具体的な戦略はまだ描けていない。

 奈良県の山下真知事は「中南和(県中南部)にも素晴らしい観光資源はたくさんある。中南和に足を延ばそうと思ったら県内で1泊せざるをえなくなる。奈良で泊まることの魅力をもっともっとPRしないといけない」と強調する。

 奈良県立大の新井直樹教授(観光政策)は「自然と歴史が調和しているのが奈良のよさ」と指摘。江戸時代のまち並みが残る橿原市の今井町や五條市の五條新町、県南部の熊野古道などを挙げて「すでにある古いものを観光に活用していくべき。交通が不便でも他府県では訪日客が増えているところもあり、宿泊客数を増やす観光地として可能性がある」と提言する。(張英壽)

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