これらの事例が示す通り、豊富な経験を積んでいる人こそ、「何をするか」「誰と働くか」「どんな時間の使い方をするか」といった価値観を重視する傾向にあります。もはや、報酬の引き上げだけでは採用競争を勝ち抜けない時代。企業には、より多様なニーズに応える柔軟かつ戦略的なアプローチが求められています。企業が見直すべき、3つの採用戦略を解説しましょう。
(1)「この会社で働く意味」を提示できているか
現場への回帰や、社会的インパクトのある仕事を志向する層に対しては、「なぜこの仕事をやるのか」「なぜこの会社でなければならないのか」という意味付けが重要です。そのため、職種や役割だけでなく、候補者一人一人に合わせて「この会社で何ができるか」、例えば「事業のどのフェーズで、どのような技術的裁量を担ってもらうのか」「これまでの経験がどう生かされ、組織にどう影響を与えるのか」といったことを具体的に示しましょう。
(2)「非管理職のキャリア」の確立と挑戦環境の提供
レバテックの調査によると、年収1000万円を超えるエンジニアの37.7%が「今後、管理職になりたくない/続けたくない」と回答しています。“非管理職のキャリア”を志向するハイクラス人材は、決して少なくありません。こうした実態を踏まえると、企業には管理職への昇進を前提としないキャリアパスや、技術・専門性によって正当に評価される制度の整備が求められているといえるでしょう。
(3)生涯現役時代を見据えた「自分らしい働き方」の実現
実際のカウンセリングの場面でも、年収よりも「自分らしい働き方」を重視したいというニーズは増えています。特に30代後半以降のハイクラス層では、子育て、介護、健康、学び直しといったライフイベントと、仕事をどう両立させるかが意思決定に大きく影響するケースが年々増加。年収だけでなく、柔軟な勤務時間、稼働量のコントロール、家庭との両立を前提としたポジション設計など、働き続けやすい環境づくりが重要です。
ハイクラス人材の採用で重要なのは、「この会社で働くことが、その人にとって意味のある選択肢かどうか」を一人一人に合わせて具体的に伝えられるかどうかです。年収水準を引き上げるだけでは差別化できない今、「働き方」「役割」「時間の使い方」まで含めて、納得感のある選択肢を提示できることが企業には求められています。これからの採用戦略には、「どのように採用するか」ではなく、「どうすれば選ばれるか」という発想の転換が不可欠といえるでしょう。
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