ただし、PBRが「簿価」(取得時の価格)を基準にしている点を踏まえると、なお割安感を持つ投資家がいるのも事実だ。
フジHDが保有する主要不動産は、バブル崩壊後の1990年代後半〜2000年代半ばに取得・開発されたものが多い。そのため、簿価と現在の時価には大きな乖離が生じている可能性が高い。
東京都の平均公示地価によれば、当時23区の平均地価は坪当たり約233万円だったが、現在ではおよそ440万円とほぼ2倍に上昇している。
特にフジHDの不動産は都内でも需要の高い一等地に集中しており、この地価上昇を反映すれば、含み益を加味した「実質PBR」は0.7倍程度との見方もある。
このように、見かけ上は割高に見えても、簿価ベースではなお割安との見方が、フジHD株に対する継続的な買いの一因になっている。
とはいえ、ここで疑問が湧く。PBRという指標は投資の基本中の基本だ。百戦錬磨の機関投資家や大手ファンドが、この「実質割安銘柄」を長年見逃してきたのだろうか。
PBR0.6倍のまま放置されていた銘柄が、不祥事で注目されただけで0.9倍近くまで買い上げられるというのは、冷静さを欠いた相場とも映る。
過去に評価されなかった背景には、メディア業界全体の成長性への懸念や、不動産の売却難、ガバナンス不安などの要素があったはずだ。
仮にポイズンピルによる防衛策が発動され、買収の可能性が遠のけば、「高値でも買う」理由は一気に後退する。
現在の株高は、あくまでファンドの思惑や資産価値への期待といった特殊要因によって支えられている面が強い。買収が頓挫すれば材料が出尽くし、投資マネーは次のテーマへと流れていく可能性がある。
さらにポイズンピルの発動は、既存株主の持ち分も希薄化させるため、企業防衛の成否にかかわらず株主に損失をもたらすリスクがある。
場合によっては、株主が「経営陣の判断が株主利益を毀損した」として、株主代表訴訟に発展する可能性も否定できない。フジHDはガバナンス上の観点も踏まえ、極めて慎重な対応が求められる局面に差し掛かっている。
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