Oliveに「似てるな……」三井住友幹部が吐露 三菱UFJ「エムット」20%還元の追撃、“メガバン顧客囲い込み戦争”の行方は(3/3 ページ)

» 2025年07月25日 08時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]
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エムットが抱えるポイント利便性の課題

 Oliveをよく研究して設計されたエムットだが、根本的な課題もある。ポイントの使い勝手だ。VポイントがTポイントと統合して加盟店の数や認知度でブレイクした一方で、MUFGのグローバルポイントはかなりマイナーな存在だ。

 1ポイント=5円相当とはいうものの、そのレートで交換できるのはAmazonギフトカードだけ。他のポイントやカード利用額への充当は1ポイント=4円でしかない。6月にやっとグローバルポイントWalletというタッチ決済で利用できるサービスが開始し、1ポイント=5円で利用できるようになったが、まだまだ利便性は不十分だ。

 Vポイントがさまざまな企業が相乗りする共通ポイントなのに対し、エムットのグローバルポイントはあくまでMUFGグループの独自ポイント制度だ。実のところ、VポイントがブレイクしたのもTポイントとの統合あってのことで、それ以前は極めて認知度の低いポイントだった。ポイント経済圏の広がりで見た場合、この差は大きい。

 またエムットはグローバルポイントをメインとしているが、MUFGは以前から「メインバンク プラス ポイントサービス」などでPontaポイントを提供してきた。MUFGは2026年にポイントサービスをリニューアルするとしており、これらのポイントをどう整理するかが、OliveのVポイント対抗では重要になるだろう。

ブランド統一の明暗が分かれる戦略

 両社の競争で見落とされがちだが重要なのが、ブランディング戦略の違いだ。Oliveがクレジットカードも含めて「Olive」ブランドとし、ユーザーから見て銀行とカードの垣根がほぼ消失した統合サービスである一方で、エムットは三菱UFJのリテール向けサービスを総称するブランド名にとどまる。

 あくまでカードの名称はこれまで通り「三菱UFJカード」であり、コード決済は「COIN+」のまま、資産運用は「三菱UFJ eスマート証券」「WealthNavi for 三菱UFJ銀行」となっている。エムットの名前は一切冠されていない。「エムットとは具体的に何なのか」はなかなか答えにくい問いだろう。エムットの真の挑戦は、20%還元よりも縦割りのサービスを統合して提供していくことにありそうだ。

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