冒頭で紹介した中堅商社の営業部で、この順番通りに働きかけを続けた。
最初の1カ月は、まだ半信半疑のメンバーも多かった。しかし自燃人のタイプの人たち(約3人)が率先して行動を始めると、空気が変わり始めた。
朝礼で成功事例を共有し、週次での進捗報告も続けた。3カ月が過ぎるころ、アーリー可燃人たち(8人)が徐々に動き始めた。「Sさんがあんなに成果を出しているなら、自分も」という声が聞こえてくる。
アーリー可燃人が動き始めると、ここからは早い。残りのレイト可燃人(9人)も重い腰を上げた。「みんなやっているし、自分だけ何もしないわけにはいかない」という空気が広がったのだ(幸い、アンチ不燃人は一人もいなかった)。
1年後、営業部は見違えるように変わっていた。新規開拓件数は3倍。売り上げは前年比120%を達成。何より驚いたのは、メンバーの表情だった。
「最初は正直、面倒だと思っていました」
レイト可燃人だったYさんが笑顔で語る。
「でも、みんなが楽しそうに仕事しているのを見て、自分も変わらなきゃと思ったのです」
朝礼は活気にあふれ、会議では積極的な提案が飛び交う。「忙しい」という言い訳は誰も口にしなくなった。
部長は言う。
「全員を一度に変えようとしていたのが間違いでした。順番を意識したら、自然と組織が動き始めたのです」
ミラーニューロンが正しく機能したことが大きい、と私は思った。
部下が言うことを聞かない理由は単純だ。上司が全員を同じように扱い、同じタイミングで動かそうとするからである。人には7つのタイプがある。それぞれに合った順番で働きかければ、9割は必ず動く。
重要なのは、個人を変えようとするのではなく、組織の空気を戦略的に変えることである。正しい順番で火を付ければ、ミラーニューロンが作動し、自然と全体が動き始める。これが、言うことを聞かない部下を主体的に動かす効率のいいテクニックだ。
わかりやすさよりも大切な話し方: 自分視点から相手視点に切り替える話し方改革
「論理的に話しているのに伝わらない……」そんな悩みを抱える人に向けた、“相手を動かす話し方”の指南書。鍵は、小手先のテクニックではなく「自分視点」から「相手視点」への切り替え。相手の“燃え方”で7タイプに分類し、それぞれに響く言葉や伝え方を解説。200社以上を支援してきたコンサルタントによる、人間関係にも効く“話し方の集大成”です。
部下に「仕事は終わってないですが定時なので帰ります」と言われたら、どう答える?
新入社員「Web会議でカメラオンにする必要なくないですか?」 上司のあなたはどう答える?
部下から「給料を上げてください」と言われたら、上司のあなたはどう返す?
「お前はどうしたい?」しか言わない上司の自己満足 「考えさせる風」コミュニケーションが招く悲劇
部下が相談する気をなくす、上司の無神経な「たった一言」Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング