――若い人たちに関わってほしいという話が出たが、会員の高齢化、会員数の減少が課題になっていると聞く。
現在、会員の平均年齢が非常に高くなっており、40代以下の会員は数えるほどしかいない。一方、ペンの国際大会に出席すると、30代くらいの若い人たちが活発に活動している。日本ペンクラブにおいても、今後は若手作家委員会のようなものをつくり、横のつながりが広がっていけばいいと思っている。若手の作家・論客を中心に、魅力的なテーマについて考えるシンポジウムをやっていくようなこともいいかもしれない。
日本ペンクラブというと、世間的に見れば「作家集団」「リベラルの人たちの集まり」といったイメージがあるのかもしれないが、今の時世においてはそれが必ずしもプラスに働いていないように思う。実際にはジャーナリスト、編集者、研究者など、さまざまな職業の人たちに所属していただいているし、もっとカジュアルな場と思っていただいていいと思う。やる気があって活動したい人がいれば、大歓迎だ。
一方、会員の減少に関しては、国全体の人口が減少するフェーズに入っていることに鑑みれば、縮小しつつも機能的な方向性を見いだすという考えに変えていかなければならないと思う。その意味でペンクラブの存在意義を、きちんと再定義しなければならない。
――表現の自由との関係で、ほかに危惧していることはあるか。
キャンセルカルチャー(不適切な発言をした人・団体を糾弾し、社会的に排除する動き)の横行は非常に気になっている。もちろん、実際に社会的に非難されるべき事例もあるとは思うが、ネット社会の弊害として、問題が過大に扱われるケースが増えている。
表現者としては、もちろん発言に気を付けるべきではあるが、キャンセルカルチャーを気にするあまり、それが「言葉狩り」のように作用する結果、表現が骨抜きになり、結局のところ何を言いたいのかが分からなくなる。
とくに電子出版などネット上の表現になった瞬間に、文脈を無視してありとあらゆる切り取りが行われる。この5〜6年でそういった風潮がとても大きくなったように感じている。表現の自由の観点からすれば非常に由々しき問題であり、何をやっても炎上する可能性があるという覚悟は、皆が持っていると思う。
今回の緊急声明発出も、ある意味、炎上覚悟だった。私1人が集中砲火を浴びないようにと、ある理事の配慮で「会長 桐野夏生」の下に「理事会一同」という文言が加えられた。昨今の風潮を踏まえてのことであり、これまでにはなかったことだ。
――ご自身の創作活動について。7月に、シリーズものの完結編として『ダークネス』(新潮社)を上梓された。今後、扱いたいテーマとしてどのようなものがあるか。
今、準備しているテーマとして若い女性への徴兵制が敷かれたらどうなるかというのがある。SF的に感じるかもしれないが、韓国ではミソジニー(女性嫌悪)の風潮が進んでいて、その延長で女性にも徴兵制を導入すべきとの声がたびたび出ている。
また、男女平等が進んでいるノルウェーでは、男女ともに徴兵制が敷かれている(ただし「選択的徴兵制」であり、個人の入隊意志が尊重される)。ちなみにノルウェーでは兵舎も男女同室だ。男女平等が当たり前の社会では、それすらも気にならないのだろう。
こうして見ると女性の徴兵制というのも意外とリアルな話なのだ。若い人たちの貧困・失業対策として兵役が持ち出されるといったことも、あり得ないことではなく、危うい問題だと捉えている。
情報発信の炎上リスクはいわゆる表現者のみならず、一般企業においても同様に大きな問題になっている。テレビCMやSNS発信に対する予期せぬ炎上に対し、企業が謝罪に追い込まれるケースが相次ぐ中、いくら顧客第一とはいえ、感情的なSNSの反応に企業は無条件に屈するべきなのか。近年社会問題化している「カスハラ」にも通じる問題であり、毅然とした態度を取るべきケースもあるように思う。いずれにせよ、社会全体の成熟が求められる。
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