「世の中の文字は小さすぎて、読めない!」 800万人が直面する“老眼問題”と働き方の落とし穴スピン経済の歩き方(6/6 ページ)

» 2025年08月20日 08時50分 公開
[窪田順生ITmedia]
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「老眼なのに老眼鏡をかけたくない人」が一定数いるワケ

 戦前から戦時中、戦後にかけて海外の風刺画で「日本人」が描かれるときはかなりの確率で「眼鏡」をかけている。これは人種差別などではなく実際に他国と比べて、眼鏡をかける人の割合の高い「近眼国」だったからだ。

日本は世界的な近眼国といはれ、また日本人は世界一の眼鏡愛用者だといはれています。さうして統計によりますと小学校に入ったときは1割5分の近視眼が中学に進むと2割に、専門学校を卒業するころには5割に増え、さらに50歳以上となると殆んど全部が老眼になる、といふことです。(出典:日本都市大観 大阪毎日新聞社編 昭和11年版)

 日本人は100年前からこのような“眼鏡コンプレックス”を抱いてきた。戦後から高度経済成長期くらいまでは、まわりに眼鏡をかけた人ばかりだし、他に手段がないので眼鏡をかけ続けた人が多かった。

 しかし、日本が豊かになった1980年代くらいからコンタクトレンズが庶民にも普及し、「近眼なのに眼鏡をかけたくない人」を中心に爆発的に広まったのではないのか。

眼鏡人口が多かった日本

 そういう日本人の「眼鏡コンプレックス」を考えると、「老眼なのに老眼鏡をかけたくない人」が一定数いるのも無理はない。

 戦前の辞書で「老眼」を引いてみると、「視力の弱りしまなこ 衰眼」なんて説明されていることが多い。つまり、老眼というのは人間が衰えて、死に向かう過程の象徴とみなされていたのだ。

 こういうネガティブなイメージは令和の現在まで続いている。そこで提案だが、まずは「老眼」という呼び方をやめにしないか。

 「大人視力」「成長眼」、あるいは「ネクスト・フォーカス」なんて感じでポジティブにしていくのだ。

 ふざけているわけではない。2040年ごろには日本人の半数近くが老眼になる見込みだ。日本の労働生産性向上のためにも、日本政府はぜひ真剣に検討していただきたい。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル

 近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受


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