両者の違いは出店地域でも見られる。
大戸屋は現在、国内で313店舗を展開しており、そのうち過半数が首都圏に集中している。2020年3月期末時点では約350店舗を展開していたが、コロナ禍で閉店が相次いだ。
やよい軒も、コロナ禍前の約380店舗から現在では360店舗まで減少した。地域別では、首都圏の1都3県に100店舗ほどあり、全体の約3割で集中度は小さい。愛知や大阪、福岡にも数十店舗と、大戸屋よりも広めに出店している。運営元のプレナスは九州出身の企業であり、前身のめしや丼が福岡市に1号店を構えたことが関係しているのだろう。
価格でいえば、前述の通りやよい軒の方が150円程度安い上に、ご飯のおかわりが自由である。やよい軒は出費を抑えたい地方のニーズを押さえたといわれており、価格差が出店地域の差に影響したと考えられる。1000円以下のメニューがそろうやよい軒と比較し、大戸屋は定食のほとんどが1000円以上だ。外食では「1000円の壁」が一つのハードルであり、今後も大戸屋の進出地域は自ずと限られそうだ。
プレナスは2022年にMBOを実施した。上場を続けていると少数株主の意見を考慮する必要があるため、不採算店の閉鎖や改革を迅速に進める狙いがあったとみられる。MBO発表時の資料においてプレナスは、店舗資産を貸し付けてオーナー側の出店費用を抑える「ユニットFC制度」を活用し、やよい軒で800店体制を目指すと発表していた。しかし、その後はむしろ店舗数が減少している。海外店舗数も約250店舗で頭打ちとなった。
FC比率4割の大戸屋も、新規出店には苦戦している。同じ定食屋業態では、フジオフードシステムが運営する「まいどおおきに食堂」もここ数年でFCの退店が相次ぎ、大幅に店舗数を減少させた。加盟店が集まらないのは、よりもうかりそうな他業態があるためだ。メニューの絞り込みによる店舗負担の低減や収益改善など、加盟希望者にとって魅力的な施策を打ち出せなければ、定食業態各社は今後も苦戦を余儀なくされるだろう。
山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_
田舎の普通の定食屋がなぜか混んでいるワケ
外食チェーンの「朝食」競争に新展開 松屋が超えた「200円台」の壁 「朝得プラスワン」戦略の狙いとはCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング