イオンの攻勢、セブンの苦境――「スーパー大再編時代」と寡占化の行方小売・流通アナリストの視点(2/4 ページ)

» 2025年09月04日 08時00分 公開
[中井彰人ITmedia]

首都圏と京阪神での状況は……?

 今回統合が進められている首都圏や京阪神の状況について、2024年度のデータを見ると、首都圏ではすでにイオンがトップシェアを確立しているといえる。

首都圏ではトップシェアのイオン

 USMH(マルエツ、カスミ、マックスバリュ関東)には、いなげやが加わっており、この時点で売上高は1兆円弱の規模となっている。そこにダイエーとイオンマーケットを合わせると売上高1.1兆円を超え、ここにまいばすけっとの売上高2900億円を加えると、総額で1.4兆円規模に達する。

 かつて首都圏のトップはイトーヨーカ堂だった。しかし、すでに大規模な店舗閉鎖が進められており、前期1.1兆円からさらに減収となることは確実だ。

 首都圏でも、イオンのトップシェアは揺るがない状況にある。ただし、USMHについては、統合によって形成されたシェアであり、必ずしも圧倒的な競争力を備えているわけではない。

 個店ベースの集客力では、オーケー、ロピア、ヤオコー、ライフ、ベルク、サミットなどが非常に高く、売上も伸ばしている。そのため、イオン系チェーンが圧倒的優位に立っているわけではない。だからこそ、規模で最大となったこの好機を生かし、インフラ統合による生産性向上を実現し、名実ともにトップシェアを確立しようとしているのだろう。

 京阪神に関しては、H2Oリテイリング(食品事業)、万代、ライフコーポレーションの3強がそれぞれ売り上げ4000億円規模で並び、都市部のシェアを押さえている。イオンは統合後、売上3000億円規模になる見込みで、上位勢とは一定の差がある位置付けといえる。また、ロピアやオーケーといった関東のディスカウントスーパーが出店を加速しており、その存在感が急速に拡大している。

京阪神の状況

 しかし、京阪神にはM&Aによって逆転を狙える規模の中堅スーパーが少なく、イオンが得意としてきたM&Aで一気に逆転するための有力な候補が見当たらない。こうした事情もあり、イオンが京阪神でトップシェアを達成するハードルは高いだろう。今後のシェア拡大に向け、まずはダイエーと光洋の統合によって競争力を高める段階にあるのかもしれない。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アイティメディアからのお知らせ

SaaS最新情報 by ITセレクトPR
あなたにおすすめの記事PR