中でも象徴的な出来事が、大手企業による大規模リストラでした。日本航空(JAL)や東芝といった名だたる企業も、人員削減を余儀なくされます。この時期、企業は人件費の変動費化を進め、正社員の代わりに派遣社員や契約社員の採用を増やしていきます。
1995年以降、非正規雇用の割合は急増。2005年には全労働者の30%に達し、2022年には37%にまで上昇しています。特に技術職では、専門スキルを持つ契約社員の需要が高まりました。終身雇用から、より柔軟な雇用形態へのシフトが始まったのです。
この流れの中で、労働組合の影響力も著しく低下していきます。組織率は25%を下回り、企業側が雇用条件の決定で主導権を握るようになりました。経団連は、グローバル競争に対応するため、雇用の柔軟化や成果主義の導入を積極的に推進。トヨタ自動車や東芝など、多くの大企業がこの流れに追従し、従来の終身雇用制度は大きく揺らぐことになります。
2020年代に入った今、終身雇用制度は新たな転換期を迎えています。
デジタル化とグローバル化により、企業は従来の雇用形態にとらわれない柔軟な人材活用を模索し始めています。象徴的な例が、トヨタ自動車が2021年に導入した「自由勤務制度」です。リモートワークを前提とした柔軟な働き方は、従来の終身雇用制度とは異なる新しい雇用モデルを示唆しています。
特にIT業界では、プロジェクトベースの雇用やジョブ型雇用が主流になりつつあります。ソフトバンクや楽天といった企業では、成果を重視した柔軟な雇用形態が一般的になってきました。労働組合も、従来の雇用安定要求だけでなく、リスキリング支援や働き方改革など、新しい課題への対応を迫られています。
しかし、これは終身雇用制度の完全な消滅を意味するわけではありません。むしろ、従来の終身雇用制度と新しい雇用形態が共存する「ハイブリッド型」の労働市場が形成される可能性が高まっています。企業は、事業の特性や人材の役割に応じて、適切な雇用形態を選択するようになってきています。日本の雇用システムは、まさに新しい時代への過渡期を迎えているといえるでしょう。
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