伊佐さんによると、中小企業の生成AI活用を成功させるためのポイントは、3つあるという。
1つはデータを統合すること。データが1つの場所に正しく集約されていれば、生成AIが状況や関係性、文脈を理解し、出力できる。データ基盤が構築されていないと、精度の低い回答を生成する可能性も高まり、結果として「生成AI活用がうまくいかなかった」という状況になりやすい。
データ基盤の構築は生成AI活用の肝となるが、同社が実施した調査によると「営業部署内のデータが適切に管理されていない」(28.1%)、「他部署とのデータ連携が進んでいない」(24.4%)といまだに課題も多い状況だ。
2つ目は、段階的に進めること。スモールスタート、スモールサクセスが重要だと伊佐さんは続ける。
3つ目は、AIとヒトの付き合い方についてしっかりと話し合うこと。AIは何でもできるわけではない。何をAIに任せて、ヒトはどのような業務を担うか、それぞれの役割を検討する必要がある。
特定のスキルや業務を代替してくれる生成AIの存在は、人手不足や人件費高騰に悩む中小企業が、ビジネスを伸ばしていくための戦略の柱となる可能性も高そうだ。
ここまでは“現在”の話をしてきたが、少し未来の話もしたい。
HubSpotは9月3〜5日に、米サンフランシスコで年次イベント「INBOUND」を開催。これからの生成AI活用における重要なトピックをさまざま紹介した。
特に筆者が気になったのが、AIエージェントを活用し、AIとヒトのハイブリッドチームを作るという考え方だ。
HubSpotはINBOUNDにて、同社が提供するAIエージェント「Breeze Agents」内で、新たに15体以上のAIエージェントの提供を発表。各エージェントにはそれぞれ明確な役割を与えており、顧客からの問い合わせに回答する「顧客対応エージェント」、24時間体制での見込み客の購買シグナルをモニタリングし、適切なタイミングでコミュニケーションを取ることで商談化につなげる「案件創出エージェント」などをそろえた。
同社が提供する「Agent.Ai」と呼ばれるAIエージェントプラットフォームには「データ分析が得意なAIエージェント」「SNS投稿の作成、実行、分析が得意なAIエージェント」「イベントの企画、運営が得意なAIエージェント」がずらりと並ぶ。
伊佐さんは「App Storeに近いイメージ」と説明。それぞれのAIエージェントに対するレビュー数や満足度が開示されているため、求める役割に一番合ったAIエージェントを選択できる。これまでの組織にAIエージェントを掛け合わせて、ハイブリッドなチームを構築していくという世界が、近い将来やってくるかもしれない。
昨今、プロフェッショナルなスキルや豊富な経験を持つマーケター人材を採用する難しさは増す一方だ。特定の業務において高いスキルを持つAIエージェントを“雇う”ことができれば、少ない人数で効率的に施策を展開できる可能性が広がる。例えば、“一人マーケター”がAIエージェントとチームを組み、たくさんのキャンペーンを同時に進行することも、近い未来には実現するのかもしれない。
とはいえ、日本ではAIエージェントの活用がそこまで進んでいない印象もある。INBOUND内では、AIエージェントを実際に現場で作る方法や活用推進に向けて必要なポイントの他、AIエージェントが今後マーケティング業務をどう変えるのかなど、さまざまなメッセージが発表された。
次回以降の記事で詳しく紹介する。
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