大手企業を中心に、生成AIを活用して業務効率化、これまでのオペレーションの見直しを進める企業が増えている。人材も資金も豊富な大手企業は、さまざまな生成AIツールを契約し、全従業員が活用できる環境を整えることに早急に取り組んできた。
一方、中小企業はどうだろうか。昨今、低い労働生産性、低い利益率を背景に、中小企業を取り巻く状況は悪化の一途をたどっているとされている(参考:中小企業の利益は「大手に取られている」 それでも“売上高100億円”になれる3つの勝ちパターン)。
日本企業のほとんどを占める中小企業。その成長が今後の日本経済を左右するとし、経済産業省も現在、補助金制度を拡充するなど力を入れる。
少ないリソースで高い利益を生んでいくためには、業務の効率化が欠かせない。そんな状況下で、生成AIの登場は、中小企業にとって強力な味方となりそうだが、実際の活用状況はどうなのだろうか。
これまでCRM(顧客管理システム)を中心としたさまざまな製品群を主に中小企業に向けて提供してきたHubSpot Japanの伊佐裕也さん(シニアマーケティングディレクター)は、中小企業の生成AI活用の現在地について「二極化が進んでいるのではないか」と指摘する。
「スキルやリソース、資金が足りない状況下でも、アイデアがあれば、多くのマーケティング施策を実行できる。今後さらなる人手不足が進む中で、生成AIは中小企業にこそ恩恵の大きいツールになるのではないでしょうか?」(伊佐さん)
生成AIは中小企業の経営を脅かすのか、もしくは成長を助ける存在となるのか。話を聞いた。
日本企業においても、企業規模にかかわらず生成AIへの期待値は高いという。「中小企業の生成AI活用については、挑戦したいと考えている人は想像以上に多いのではないか」(伊佐さん)
しかし依然として、「どのように使えばいいのか分からない」「事例や実績が少なく心配だ」という声も多い。伊佐さんは「大企業よりも中小企業の方がAIの利用の度合いが二極化しやすいのではないか」と指摘する。
「上場している企業では、生成AI活用について投資家から強いプレッシャーを受けているケースも多く耳にします。そもそも、社内で『AI活用推進をしないなんてどういうことだ!』という声が上がることも多いでしょう」
「一方中小企業は、日々の業務に追われそこまでの余裕がなかったり、未上場企業が多いため外部からの圧力がないぶん、プレッシャーが少ない状況もあります。そういった中、生成AI時代をチャンスと捉え、生産性を高めようと挑戦する企業と、『まだ当社には早いんじゃないかな?』と、現状維持を選ぶ企業で、二極化しやすい傾向があると考えています」
しかし、生成AIというテクノロジーは中小企業にこそ恩恵の大きいツールなのではないかと、伊佐さんは続ける。
少子高齢化で労働力人口が減少する中、さらに採用のハードルも上がるだろう。少ない人員でどのように生産性を高め、事業を成長させていけるか──その手段として生成AIが有効となる可能性は高い。
イメージや使用用途を自然言語で伝えれば画像や動画を生成でき、「こんな文章を書きたい」と伝えれば文章も作れる。「コピーライティングのスキルやイラストを作成するスキルを持っていないマーケターも、生成AIを使うことで、アイデアを簡単に形にできる。マーケターにとってすごく面白い時代になりました」
同様の事例として、Google 広告を紹介する。
「Google 広告は、『誰に何を、どのように伝えたいか』をしっかり定義できていれば、コストを抑え、リソースもそこまでかけずに大企業と対等にビジネスができる、そんなテクノロジーです。まさに生成AIも、同様の存在になるのではないでしょうか」
HubSpotでは、製品開発において既存サービスに自然に生成AI機能を組み込むことを重視している。HubSpotの製品を使っていれば、自然と生成AIも活用できる状態を目指し、サービスの拡充を進める。
それに加え、生成AI活用に対する不安を取り除くためのコミュニケーションも重要だと続ける。
「不安な気持ちや、何から始めたらいいか分からない状況に対して、『こういうことから始めてみるのはどうですか?』という内容を発信することにも取り組んでいきます」
「ストーリー重要」の時代は終わった レイ・イナモト氏が語る、これからのブランド構築の最適解
広告業界で急成長する3つのAI活用領域とは? 電通デジタルCAIOに聞く
野村が捨てた「資産3億円未満」を狙え SMBC×SBIが狙う“新興富裕層”の正体
DXの“押し付け”がハラスメントに!? クレディセゾンのデジタル人材育成を成功に導いた「三層構造」とはCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング