このベルクの例からも、各地で特色あるスーパーや専門店が局地戦を展開しており、現在の市場環境は「小売戦国時代」といえます。そのため、決まった「勝ち筋」は存在しないことが分かります。
もちろん、ドンキには他社にはまねできない強みがあるのは確かです。前述のような、現場に権限を委譲しながらも本社がしっかりと支援する体制や、海外展開で築いたブランド力は、一朝一夕に築けるものではありません。
また、経営陣の世代交代も順調に進んでおり、マッキンゼー出身の現社長は外部の知見を取り入れつつ、創業以来の現場主義という理念を継承。家族経営ではなく、人材が着実に育っている点も、持続的成長を支える基盤となっています。
今後も続くと見られる小売業界の戦国時代。ドンキのように国内と海外の両輪で成長し、徹底した現場主義で経営を行っている企業が、めまぐるしく変化する外部環境の中でどのように進化していくのか。その動向に、引き続き注目していきたいと思います。
草刈 貴弘
大学卒業後、舞台役者などを経て2007年にSBIリアルマーケティングに入社。2008年にさわかみ投信に転じ、顧客対応部門、バックオフィスの責任者、アナリスト、ファンドマネージャーを経験し、2013年に最高投資責任者、運用調査部長、2015年取締役最高投資責任者に就任。2023年3月に現職のカタリスト投資顧問に入社し、同年6月に取締役共同社長に就任。
投資先企業の企業価値向上に直接寄与することで、日本企業の成長と資本市場の活性化と、個人投資家の財産づくりを両立することを志向する。ファンダメンタル分析を基にしたバリュー投資を軸に、持続的成長の転換点を探るのをモットーとする。現在、朝日インテック社外取締役。東洋大学理工学部卒。
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