日本の20歳の好奇心は、スウェーデンの65歳とほぼ同じ──。
教育社会学者の舞田敏彦氏の分析で、こんな衝撃的な事実が明らかになり、話題になったことを覚えているでしょうか。今から10年以上前。2013年12月です。
分析に使われたのは経済協力開発機構(OECD)が中心となって実施している「国際成人力調査」(PIAAC)のデータです。これは16〜65歳が社会生活や仕事で必要とされる総合的なスキル(成人力)を国際的に比較・分析するための調査で、読解力、数的思考力、ITを活用した問題解決能力といった主要なスキルの評価に加え、「知的好奇心」(curiosity)に関する質問も含まれています。
知的好奇心は、単なる知識の有無を問うものではなく、新しいことを学びたいという意欲や、未知の事柄を探求する傾向を測るものです。具体的には「新しい知識を学ぶのが好きか」「知らないことに出会うとわくわくするか」といった質問を通じて、個人の学習意欲や探求心を探ります。
その「わくわく感」が高いであろう20歳の若者のレベルが、日本では高齢者にあたる「スウェーデンの65歳」と変わらなかったとは……言葉もありません。一方で、当時はその他のさまざまな調査でも、若者の安定志向の高まりが確認されていたので、件の結果に「やはりそうか」と納得する人も少なくありませんでした。
そして今回、再び「驚きと納得」の結果が、産業能率大学総合研究所の調査で明らかになりました。2025年度の新入社員は、なんと「成果主義」より「年功序列」を望む傾向が強まっているというのです。
「年功序列」を望む割合は、2022年度(38.9%)から徐々に上昇し、2024年度には48.5%、2025年度はついには半数を超え56.3%に達しました。「成果主義」を望む人の割合は43.6%ですから、13ポイント近く上回っています。
また、「終身雇用」についても約7割が「望む」とし、「同じ会社に長く勤めたいか」という問いに対しても約5割が支持しています(いずれの回答も「どちらかといえば思う」を含む)。
経済界の重鎮たちは「成果主義」の名を借りて年功序列・年功賃金のコストを削減。諸悪の根源のごとく「終身雇用」を否定してきたのに、皮肉としかいいようがありません。
しかし、国の元気がなければ安定志向になるのは世の常ですし、頑張ったところで報われない世の中です。
以前、50代の男性がのらりくらりと働く息子に「もっと頑張らないとこの先困るぞ!」と喝をいれたところ、「どうせ努力したって報われないでしょ。50歳になったら会社に捨てられるわけでしょ? だったら、無駄な努力はしない方がいい」と返され、「自分でも納得してしまった」と話してくれたことがありました。
つまり、件の調査結果は若者の無力感と閉塞感の現れであり、企業の在り方、会社の社員との向き合い方の「さまざまな問題」を浮き彫りにした結果といっても過言ではありません。
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