トヨタ自動車は、自動車製造過程で生まれる廃棄材を活用したアップサイクル事業に注力している。同社は9月19日、LEXUSのシートに使用している牛革の廃材を使用した新ブランド「Tsugi-Craft by TOYOTA UPCYCLE」を発表した。自動車メーカーである同社がアップサイクル事業に注力する背景には、製造業ならではの課題があった。
近年、サステナビリティに対する意識が高まっている。中でもアパレル業界では大量生産・大量廃棄への問題意識が叫ばれている。トヨタ自動車の只熊憲二氏(新規事業企画部 事業開発室長)は「自動車製造でも多くの素材を使用し、その過程でたくさんの廃材が発生してしまっていた」と話す。
廃材といっても未使用であり、素材としては十分活用できる可能性があった。「廃材を廃材で終わらせないためにも、アップサイクル事業に取り組む必要がある」(只熊氏)と説明する。
新ブランド「Tsugi-Craft by TOYOTA UPCYCLE」では、第一弾としてユニセックスなデザインのバッグを売り出す。バッグには山形県の生産ラインで出た、LEXUSシート用の本革の廃材を使用。自動車のデザインを担当する加藤舞氏(カラー&感性デザイン部 アドバンスドCMFXデザイングループ グループマネジャー)によると、自動車用のシートは、夏場の高温の室内や急な雨でも劣化しづらい強度が求められる。また、燃費を上げるために軽さも重視される。これらの条件を満たす高性能かつ軽量なレザーを活用し、パッチワークのようなデザインに仕上げた。
アイテムはトートバッグやハンドバッグ、ポーチなど6種類を展開する。バッグにはそれぞれシートベルトを流用したショルダーが付属している。組み合わせることでさまざまな持ち方を選べるようにした。
バッグの価格は6万4900〜9万9000円と、アップサイクル製品としては高価格だ。プロダクトデザインを担当したデザイナーの一法師拓門氏は「アップサイクル製品はダサい、安いといったイメージで語られがちだった。しかし、アップサイクルは廃材を活用するために、通常商品よりも製品化の工数が増えるなど手間がかかる。そのためコストを下げるのではなく、プレミアム路線を打ち出した」と話す。
中村慶至氏(新規事業部トヨタアップサイクルプロジェクトオーナー)はアップサイクル事業について、「収益第一ではなく、自動車業界が抱える環境負荷への解決策の一つとして、長く事業を継続させることが第一だ」と説明する。また、アップサイクル事業で得た知見を、本業の自動車開発にも活用。現在、廃材をより少なくするための設計技術の開発に着手しているという。
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