日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
本連載では、私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」をひも解いていきたい。
先日、外国人労働者を受け入れている企業にとって、背筋が凍るような騒動が起きた。
JICA(国際協力機構)のホームタウン認定を巡る騒動だ。
ご存じない方のために説明すると、発端は8月21日。横浜で行われたアフリカ開発会議(TICAD)に合わせてJICAがナイジェリア、モザンビーク、タンザニア、ガーナとの交流を進める目的で、国内4つの地方自治体を「ホームタウン」と認定したことだった。
たかが国際交流の取り組みであるのに、JICAはなぜか「故郷」という名前を付けた。そのうえ、ナイジェリア大統領による「日本が特別なビザを出す」という誤報もあって、SNSでは「アフリカ系移民が日本に大量に押し寄せるのではないか」という話題が大きく拡散した。「ホームタウン」に認定された自治体には、仕事に支障をきたすほど抗議の電話が殺到したのである。
『デイリー新潮』(新潮社)が千葉県木更津市に確認したところ、8月25日から9月1日までの6日間(土日を除く)でなんと6400件の問い合わせがあったという。つまり、1日1060件超えのクレームを受けていたことになるのだ。
……という話を聞いて「ウチも他人事ではないな」と青ざめた企業も多いはずだ。JICAや自治体に対して「移民反対」と喉を枯らして猛抗議している方たちには大変申し上げづらいのだが、実は「移民政策」をゴリ押ししているのは日本政府でもなく、自民党でもなく、国内のほとんどの企業だからだ。
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