だから、中小企業の経営者団体「日本商工会議所」に選挙で世話になる自民党政権は、安倍政権時代から「外国人労働者の受け入れ拡大」を続けてきたのである。
それはつまり、誰が首相になったところでこの方針は変わらないということだ。高市早苗首相になろうが、小泉進次郎首相になろうが、そしてもっと言えば、政権交代しても難しい。
民主党政権が何もできなかったように、与党になった政党は、自民党に代わって経団連、日本医師会、JA、日本商工会議所という既得権益団体からのリクエストを受ける。これを突っぱねれば、民主党のようにあっという間に政権の座から引きずり下ろされてしまうので従うほかない。
このように「移民推進」という政策はブレーキの壊れたダンプカーのように、もはや誰も止められなくなってしまっているのだ。もちろん、だからといって移民反対派も絶対に折れないので、どうなるのかというと、この動きを推進していると目される政治家、役所、団体、民間企業への批判・攻撃が雪だるま式に増えていく。しかし、現実問題としてもはや外国人労働者に頼らなくては経済がまわらないので、社会は大混乱に陥る。
参考になるのは労働者の3分の1が移民だという米カリフォルニア州で「移民排斥」の動きの中で、現地の労働者から挙がった声だ。
「彼らは私たちの仲間であり、勤勉な労働者だ。誰が代わりに働くのか、誰もいない」(ロイター 2025年6月18日)
これは日本にも当てはまる。最低賃金1000円程度では生活が成り立たない低収入の仕事を、嫌がる人が多い中で担ってくれる労働者は、もはや外国人しかいないのだ。
ただ、移民社会の米国と異なり、日本にはまだこういう混乱を回避する道がある。
賃金を上げることのできない中小企業に成長を促し、日本人労働者が安定した生活が送れるような待遇を整えさせる。といっても、これを税金でやったところで「生活保護」と同じで公金依存を高めるだけだ。つまり、中小企業を厳しい環境に追い込んで「産業の新陳代謝」を促すのである。
そう聞くと、「弱者切り捨てか!」「成長できない中小企業に死ねということか」と思う人も多いだろう。そう、海外ではこのような方法は当たり前だが、「弱者保護」「平等」が骨の髄まで染み付いた日本ではこのような「中小企業強化策」は政治的にも、国民感情的にも受け入れ難い。
つまり、消去法ではあるが、もはやわれわれに残された道は、賃金を上げることのできない中小零細企業のために「安くコキ使える外国人」をじゃんじゃん受け入れていくしかないのだ。
思い当たる節のある企業・団体は、移民反対派の皆さんからの激しい攻撃に、今からしっかりと準備して備えていただきたい。
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル』
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受
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