AIは電気やコンピュータのような汎用技術になるのか?
この疑問に対し、MITのデジタルエコノミーイニシアチブのアンドリュー・マカフィーは、2024年4月に『The Economic Impact of Generative AI』と題した論文を公開。その中で、AIが汎用技術に進化する可能性について考察している。
マカフィーは、ハーバード大学のティモシー・ブレスナハン名誉教授の論文を引用しつつ、汎用技術に共通する「3つの特徴」をAIが持ち始めていると指摘した。その上で、その実現の可能性について言及している。
具体的には、AIがすでに部分的ながらも仕事に影響を与えるなど「経済・社会全体への波及」を始めていること、ベンチマークが改善され続けるなど「継続的な技術進化」をしていること、そしてタスクの自動化にとどまらず科学に新たな進歩をもたらすなど「補完的なイノベーション」を起こし始めている点を主な理由として挙げている。
では、もしAIが汎用技術になるならば、今後どのような道を歩むのか。その過程を考察することは、AI投資をバブルではなく、実需やビジネスに変えるヒントがあるだろう。
AIの近年の進化は、コンピュータが汎用技術へと進化した過程に酷似している。
1960年代、IBMなどによる垂直統合型の大型汎用機からコンピュータの商用化が始まった。1970〜80年代に入ると流れは水平分業へと移り、ソフトウェア産業が台頭した。1990年代には、Windows95やインターネットの開放、そしてHTTPの発明により、コンピュータはネットに接続することで無限ともいえる情報を得られる強力なツールとなった。これにより、メールの普及をはじめとしたビジネスコミュニケーションに革命を起こすなど、全く別物ともいえる存在へと進化したのである。
現在のAIを取り巻く環境は目まぐるしく変化している。オープンAIが大規模モデルの商用化を始めたかと思えば、すでにPerplexityなど数多くのAIを活用したサービスが登場している。用途を絞った小型特化モデルの活用など、一部ではダウンサイジングともいえる流れもみられる。
決定的だったのは、2024年11月に登場した接続規格「モデル・コンテキスト・プロトコル(MCP)」だ。これはアンソロピックが開発・公開し、AIが外部のデータを参照し、サービスを呼び出して自らの機能を拡張するためのプロトコルで、サポートするAI企業やシステムは瞬く間に増え、業界標準となりつつある。
MCPは優れたプロトコルだが、まだ発展途上だ。現時点では、PCなどで活用されるUSB-Cのような汎用インタフェースと捉えられている。しかし、その本質はコンピュータ同士をつなぎ機能を広げる「ネットワーク化」にある。
かつてインターネットの通信方式「TCP/IP」や「HTTP」によって、コンピュータがインターネットのコンテンツを手軽に利用できるようになったように、MCPはAIのネットワーク化を一気に推し進めている。今後は、インターネットのさらに一段上に、MCPによるAIのネットワークが構築され、AIはそれを介して機能を広げていくことになるだろう。
これはかつてPCがインターネットにつながったときの状況に近い。ここ数年のAIの進化は、コンピュータとインターネットが歩んできた道をなぞっているようにみえる。
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