生活者は、さまざまな媒体を行き来し、これら3つの行動を巧みに使いこなすことで、自分にとって最適な買い物は何か判断している。同社はこのような一連の行動を「情報ドリフティング」と名付けた。
注目したいのは、購買前の情報収集行動に順番がないことだ。朴氏は「3つの行動全てが、新しい選択肢を認知する可能性も、購入に直結する可能性も秘めている」と指摘する。
例えば、自分の興味関心に合致している広告が表示され、すぐに商品を購入した場合、ファネルでいえば「興味関心」や「比較・検討」の項目が省略されていることになる。「個人に向けて適切な情報が提供されていれば、認知から購入までの距離(時間など)を圧縮できるはずだ」
つまり、情報収集の在り方が複雑化し、情報のパーソナライズが進んだ結果、従来のファネルの概念に当てはめて考えることが難しくなったということだろう。これまで以上に、個人にフォーカスした施策が求められる。
ファネルは戦略を立てる際の1つのフレームワークとして、マーケターの“よりどころ”のような存在だった。しかし、テクノロジーの進化で情報収集行動が変化する中で、「その概念自体に懐疑的になる可能性もある」と同社は説明する。
「ペルソナを設定し、セグメントで分けて考える──という従来のマーケティングは、どんどん変化していくと思います。これまで何らかの基準でセグメント分けをしていた集団には、実は一人一人異なる特徴を持つ個人が存在する。AIが手助けをしてくれる時代になり、こういった複雑な分析を処理できるようになりました」
最後に朴氏は、現在の生活者における購買のトリガーとなる要素について、以下のように述べた。
「生活者はAIの力を借りることで、自分では気付いていなかった新しいインサイトを得たいと考えているのです。生活者は『なぜその商品が自分にとって最善なのか』という理由を知りたいと考えています」
生成AIの登場で、マーケティングが大きく変化しようとしている。これまでのファネルの考え方だけでは通用しなくなりつつある今、マーケターには積極的なテクノロジー活用に加え、これまで以上に戦略立案スキルが求められるのかもしれない。
【お詫びと訂正:2025年10月18日午後1時50分 タイトルを一部修正しました。訂正してお詫び申し上げます。】
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