これまで何年もの間、マーケティング施策を考える際の“よりどころ”として機能してきたファネル型のモデルが崩壊を迎えようとしている──。
生成AIの登場で、生活者が購買に至るまでのプロセスが大きく変化した。これまでは、欲しい商品について調べて、商品やサービスのWebサイトを訪問し、比較検討し、購入する──という流れが一般的だとされていた。しかし、人々は検索をせず、生成AIに直接、自分に合った商品を聞くように変わりつつある。
Googleは10月8日、「AIの急速な普及と進化の中での買い物行動、生活者インサイト」に関するラウンドテーブルを実施した。同社はさまざまな調査により、生活者の購買行動の変化を分析。新たな傾向を導き出した。
Google コンシューマーマーケットインサイトチームの朴ヨンテ氏(シニア リサーチ マネージャー)は「AIは月単位で発展している」と話し、生活者の情報探索行動や購買行動にも影響を与えていると説明した。
今回同社は、3つの買い物につながる人々の情報収集行動「サーチング」「ストリーミング」「スクローリング」に注目した。1〜6月にかけて定性調査を3種類実施。その結果、これら3つの行動が今、変化していることが明らかになった。
AIの進化により、検索キーワードの背景にある意図、潜在的なニーズを把握できるようになった。
さらに画像、動画、対話など、検索手段が多様化した他、SNSやECサイト、アプリ内など、検索をする際に利用する媒体も増えた。
「調査でも、旅行を計画する際にSNSやYouTube、Google、旅行サイトなど、さまざまな手段で調べながら選択肢を吟味する生活者がいました。また、実店舗で気になった商品をその場で画像検索したり、旅行中にAIと会話をしながら次の目的地を決めていたり、目的や用途によって検索方法が多様化しています」
かつては主にエンターテインメントを楽しむために利用されていたが、現在は「自分の興味関心をとことん追求できる手段」になっていると朴氏。
「商品を開封し、利用するまでを発信するレビュー動画は、生活者にまるで商品を買ったかのような疑似体験を提供します。他にも、運動や旅行の動画を視聴することが一種の疑似体験になり、行動を起こすきっかけになることが、分野を問わず増えています」
スクロールは従来、一画面では収まりきらない情報から目当てのものを探し出す手段だったが、現在は「新しい発見を得る」手段へと変化した。「テレビのザッピング(チャンネルを次々に変え、好みの番組を探す行為)と異なり、個人の趣味嗜好に合わせて最適化された情報が提供されている」ため、行動を起こす動機になりやすい特徴がある。
「(調査対象の)ある方が話していた『スクロールして入ってくる情報は、探していないけれど知りたい情報だ』という言葉が、すごく的を射ているなと感じています」
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