なぜ近年「運転中のスマホ」が特に問題になっているのか。スマホは画面表示が豊富であり、短時間に複数の操作や情報取得が可能で、常時接続によって通知が頻繁に発生する。また手に取りやすく、運転席の近くに置きやすい。
これにより「一瞬だけ画面を見る」ことが習慣化しやすく、さらにSNSやメッセージからの通知は心理的に強い注意を引くため、視線と注意を大きくそらすことにつながる。
さらに見通しの良い直線道路であれば、画面をしばらく注視したり、SNSの返信をしたりするようになる可能性もある。そうやって感覚がまひして、事故を起こすまで危険性に気付かないケースもあると思われるのだ。
2019年にながら運転の罰則が強化され、取り締まりも増えたことで、翌年には携帯電話使用による交通事故死傷者数は減少したが、その翌年からは再び増加傾向にある。それはたかだか100件程度の話で、交通事故死傷者全体からみれば微々たるもの、という考えもあるだろう。
しかし、これは原因がスマホ利用と明確に分かったものであり、原因不明の事故も多い。また運転中のスマホ利用で検挙されるドライバー数は年間20万件規模であり、取り締まりが追いついていない状況であることを考えれば、事故の原因因子として見過ごせないのは明らかだ。
それくらいスマホは、ドライバーたちにも浸透している。そこに歯止めをかけなければ、脇見運転による不幸な交通事故はなくならないだろう。「今まで交通事故に遭わなかったのだから、今日も大丈夫」という根拠のない自信――いわゆる正常性バイアスが作用しているのだろうが、これがどれほど危険なことか気付かないのだ。
こうした状況を作り出した責任の一端があると思われるスマホメーカー、自動車メーカー、パーツサプライヤーにもできることはあるのではないか。例えば、ドライバーモニタリングシステムの普及だ。
マツダのCX-60、CX-80に搭載されているドライバーモニタリングシステムは、脇見運転を防止するだけでなく、体調急変などにも対応(写真は試作車による作動イメージ)。欧州でも同様の装備が導入されつつある。レベル2の自動運転(運転支援)でもハンズオフ機能を盛り込んだものは、ドライバーが周囲を見ているかモニタリングしている(写真:マツダ)これはダッシュボードなどにカメラを組み込んでドライバーの表情や視線を捉え、まぶたを閉じている時間が長くなったり、視点が動かなかったり、別の方向を見ていたりすると警告したり、自動的に停車したりするシステムだ。すでに一部の乗用車やトラックに導入されている。
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