スマホの「ながら運転」をどうやめさせるか カーナビの功罪とメーカーの対策高根英幸 「クルマのミライ」(5/5 ページ)

» 2025年10月17日 07時00分 公開
[高根英幸ITmedia]
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スマホを操作させない仕組みが必要ではないか

 最近は、カーナビ機能を持たず、スマホと連携して利用するディスプレイオーディオが普及している。運転中も安全に利用できるように機能を限定し、さらにダッシュボード上のモニターに映し出したり音声で読み上げたりすることで、視線の移動を最小限に抑える。いわばスマホとカーナビの中間に位置するデバイスだ。

ディスプレイオーディオにスマホを接続した例。走行中に使える機能は限定され、音声による入出力が利用できる(筆者撮影)

 筆者も利用しているが、これはドライバーが設定しなければ利用できないシステムだ。スマホを握って乗り込むドライバーの多くは、そのままスマホを車内で使い続けた方が楽だと思ってしまう。

 これでは普及は限定的になり、運転中のスマホ操作を控える効果はそれほど期待できない。乗り込んだら自動的にディスプレイオーディオに接続され、スマホ自体の操作はロックされるくらいにしないと、普及は難しいのではないだろうか。

 GPSが内蔵され、位置と移動速度が特定できるのだから、クルマで移動中と判断した場合、操作や閲覧ができないようスマホ画面をロックするような仕様を盛り込むことはできるはずだ。

 それでは助手席など他の乗員が困る、というのであれば、後席はスマホが使用できるようにするなど、規制を解除できる仕組みを作ればいい。走行中の安全のために、他の乗員もある程度は協力してもらい、車内全体で安全意識を高めた方がいいのではないだろうか。

 「車内でスマホが使えないクルマなど売れない」という意見も出そうだが、スマホ使用をドライバーのモラルに頼るのは限界に近づいている印象がある。完全自動運転が普及すれば、車内で自由にスマホを利用できそうだが、そんな時代が来るまで、ながら運転による交通事故を許容できるわけがない。スマホ利用に物理的な制限をかけることが最も有効であることは間違いない。

完全自動運転になれば、高速巡航中は読書や動画鑑賞などを楽しみながら移動することも可能だが、日本で実現するまでにはまだまだ時間がかかりそうだ(写真:ダイムラー)

 万が一、交通事故を起こしてしまった場合、ドライバーのスマホの通信記録を見れば、事故直前までスマホを使用していたか否か判断できる。自分や周囲の交通参加者を守るために、ある程度の不便さは許容しなければならないのではないだろうか。

 プロのトラックドライバーであっても、よそ見をして追突し、自身が死傷してしまうケースも起きているのだ。官民が協力して、走行中のスマホ依存からの脱却を図る時期に来ている。

筆者プロフィール:高根英幸

 芝浦工業大学機械工学部卒。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。これまで自動車雑誌数誌でメインライターを務め、テスターとして公道やサーキットでの試乗、レース参戦を経験。現在は日経Automotive、モーターファンイラストレーテッド、クラシックミニマガジンなど自動車雑誌のほか、Web媒体ではベストカーWeb、日経X TECH、ITmedia ビジネスオンライン、ビジネス+IT、MONOist、Responseなどに寄稿中。著書に「エコカー技術の最前線」(SBクリエイティブ社刊)、「メカニズム基礎講座パワートレーン編」(日経BP社刊)などがある。近著は「きちんと知りたい! 電気自動車用パワーユニットの必須知識」(日刊工業新聞社刊)、「ロードバイクの素材と構造の進化」(グランプリ出版刊)。


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