デジタル化も推進した。紙はできるだけ削減し、個人ロッカーに入る程度に従業員に減らしてもらった。ほぼ全ての場所で無線LANが使用可能。配線もできる限りなくし、すっきりさせた。そのため、至るところに持ち運びできるポータブルバッテリーを設置した 。
「デスクトップPCは全て廃止、固定電話も全てなくしました。外線も含めて全てTeamsで着信できるようにしています。また、従業員に好評だったのは、ワークステーションの全ての席にデュアルモニターを設置したことです。使い勝手はもちろん、モニターに接続するだけで、使用しながらPCが充電できるところも好評です」(ITソリューション本部 デジタル技術部長 川又一徳氏)
遊び心も忘れない。エントランスの床に光学ガラスの端材を埋め込んだり、レンズキャップ型のマンホールを作ったり、天井の照明でNikonの文字を形作ったりと“らしさ”にも気を配った。
オフィス移転の成果について、豊田氏は以下のように話す。
「移転前はフリーアドレスに変えるということで、従業員の理解を得ることに苦労しました。役員に従業員への説明をお願いしたり、さまざまな移転に関わる情報提供を行ったりしましたね。紙を減らすための断捨離にも協力してもらいました。ただ、移転後は建物のインパクトもあってか、割と好意的に受け取ってもらえたと感じています。従業員は働く場所を自律的に選択できてきていますし、新しい環境にも早く慣れた印象を持ちました」(豊田氏)
現在は、運用ルールも含めてモニタリングしながら改善をしている。改善点として、内海稔和氏(経理管理本部 総務部長 ※)は以下のように話す。
(※)取材当時の所属。
「会議をクローズドな会議室でやる人が多いので、もっとフリースペースの活用を推奨していきたいです。あとは、せっかくのファミレス席なのに、どうしても独り占めして仕事をしている従業員が多い。複数人で使用してほしかったが、実際は1人で資料を拡げて仕事してしまっている。この辺りはハードとソフトの両面でルール作りに注力していきたいと考えています」(内海氏)
また、ABWで課題となるのが「従業員が今どこにいるのか」ということ。そのため、同社では4月から、スマホで従業員の位置情報を把握できるシステムを採用した。
オフィスの至る所に仕込んだビーコンにより、自分の場所がリアルタイムでアプリ上に表示される。プライバシーにも配慮し、トイレや個人ロッカーではシグナルが消えるようにした。当然、外出先のどこにいるかは分からないようにしている。スマホもこれまでは全従業員に配っていなかったが、このアプリ導入のために全員に支給した。
「このデータを使えば、オフィス内の人流や混雑具合などが分かる。今後の運用方法やレイアウト変更も含めて、ハード・ソフト面で今後のオフィス運用に役立てていこうと考えています。また、アプリ上で従業員のアイコンが密集すると、空調の風量を変えたり、照明が明るくなったりするなどのIoT連携もできるようにしてあります」(川又氏)
最後に、今後オフィス移転やリニューアルを考えている総務担当者に対して、六日市氏は以下のように語った。
「今の働き方が決して正解ではなく、10〜20年後はまた変わっている可能性があります。いつでもその時代に合った働き方を体現できるオフィス設計にすることが重要ではないでしょうか。当オフィスでは、レイアウト変更はもちろん、会議室の新設のしやすさ、など可変性を意識したフレキシビリティな設計にしました」
部署の垣根を越えたコラボレーションの創出で、どんな新製品・サービスが生まれるのか。ニコン一眼レフカメラを愛用する著者も楽しみだ。
太田祐一(おおた ゆういち/ライター、記者)
1988年生まれ。日本大学芸術学部放送学科で脚本を学んだ後、住宅業界の新聞社に入社。全国の工務店や木材・林業分野を担当し取材・記事執筆を行った。
その後、金属業界の新聞社に転職し、銅スクラップや廃プラリサイクルなどを担当。
2020年5月にフリーランスのライター・記者として独立。現在は、さまざまな媒体で取材・記事執筆を行っている。Twitter:@oota0329
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