そこで2026年度の段階で筆者が考える現実的な着地点をご紹介したいと思います。いわば「ステージ2.5」です。
それは「AIワークフロー」です。
具体的なサービス名でいうと、n8n(n8n)、Dify(LangGenius)、Opal(Google)、Agent Builder(OpenAI)が該当します。
特徴は、生成AIやデータ処理などの機能がブロックになっていて、そのブロックをつなぎ合わせて一連の作業(ワークフロー)を自動的に実施できる点です。条件により処理を分岐させたり、繰り返し実行させたりというワークフローの制御もできるようになっています。
筆者は以前から自社のサービスの一部分をこのAIワークフローを使って運用しています。例えば、生成AIを使って少し複雑な処理をさせるためには、ChatGPTのカスタムGPTを使うことが多かったのですが、安定した挙動をさせるためにプロンプトを工夫するなど、少し職人技のようなことをやっていました。
これをAIワークフローに置き換えることにより、最初の生成AIで処理した結果を、別の生成AIでチェックし、その結果が良好ならば次の処理に進む、などの処理ができるようになりました。
そこで、実際にAIワークフローを使って、不思議な挙動をするAIチャット「20th century AI chat」を作ってみました。ぜひアクセスして試してみてください。
今回はAIワークフローサービスの中で、Difyというサービスを使ってみました。
欧米ではn8nの人気が高いのですが、日本国内ではDifyの方が人気のようです。Difyはメニュー画面などの日本語化が進んでいるので、親しみやすいことも理由の一つだと思います。今回のAIチャットのフローは次の図のようなイメージです。
非常に複雑に見えますが、いろいろな機能を後から追加したことにより、複雑に見えているだけです。
今回のAIチャットは、少し変わったコンセプトで作っています。「もし20世紀末までの記憶しかないAIがあったら、どのような会話が成立するだろう」というものです。
一般的に生成AIはナレッジカットオフと言って、ある時期までの知識しか有していません。そのため、なるべく最近の知識までを取り込むべく改良が繰り返されています。今回は逆に知識を持たないAIにするべく工夫しました。
プロンプトで「あなたは2000年末までの知識しか持っていないAIです」としても、そのような振る舞いを見せてくれません。そこで、ユーザーとの対話の中で関連するキーワードを年代とともに抽出し、それらのキーワードを使ってWeb検索したものを事前情報として保持するようにしています。
そして最終的な回答を生成する際に、その事前情報のうち、2001年以降の内容については「知らないふりをする」ように指示を加えています。知識を持たないようにするために知っている情報を排除するという、トリッキーな仕組みにより、概ね期待どおりの応答がされています。「知らない」を実現するのは思ったよりも難しいようです。
このように「プロンプトでは制御できない緻密さで挙動を制御する」ことができるのは、AIワークフローを使うメリットの一つではないかと思います。
また、画像をアップロードした場合は、画像を認識できる別のLLMを呼び出して画像を解析し、その画像を回答に反映するようにしたり、AI自身の話題(AIの名前は? 誰が作ったの? など)になった場合は、あらかじめ作成したAIの架空の設定情報を文書ファイルとして読み込ませたRAGを使って回答を生成するようにしています。
自治体の現場でAIワークフローを使う場合でも、質問の趣旨によってRAGで使う文書ファイルを使い分けるよう分岐して、適切な分野の知識で回答させるなどの応用もできそうです。
さらにAIワークフローの多くは外部サービスとの連携もできます。
今回作成したAIチャットでも、一日あたりの利用回数を制限させたかったので、利用回数をカウントするWebサービスを作成して、それをワークフローの中から呼び出すようにしました。チャットでやり取りする度に利用回数はカウントされており、あらかじめ指定した上限値に達成した段階で終了メッセージを表示させる仕組みにしています。
実際にこのAIチャットを試してみて、AIワークフローの可能性を少しでも感じ取ってもらえると嬉しいです。
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