この記事は、にゃんこそばの書籍『データでわかる東京格差』(SBクリエイティブ)に、編集を加えて転載したものです(無断転載禁止)。なお、文中の内容・肩書などは全て出版当時のものです。
国内のIT人材の6割が首都圏1都3県に住んでいると聞いたら驚くでしょうか。
総務省統計局「令和3年(2021年)経済センサス - 活動調査」によると、「通信業」「情報サービス業」(システム開発など)、「インターネット附随サービス業」(クラウドサービスなど)約5.4万事業所のうち半数近くの2.6万事業所が首都圏1都3県に集まっています。本稿では、いわゆるテック産業に焦点を当てるため、同じ「情報通信業」に含まれる放送業や出版業などを除いたこれら3業種を「IT企業」と総称します。
また、人材の面でも集中は顕著です。総務省統計局「令和2年(2020年)国勢調査」によれば、「システムコンサルタント・設計者」「ソフトウェア作成者」「その他の情報処理・通信技術者」という3つの職業にあてはまる人々(本稿ではこれを「IT人材」と定義)は全国に約125万人いますが、そのうち76万人が首都圏に在住しています。
このようにIT企業が首都圏に集中している要因としては、
(1)顧客・市場へのアクセスのしやすさ
(2)人材確保のしやすさ
が挙げられます。
(1)顧客・市場へのアクセスのしやすさという点では、特に企業の社内システムの分野において、顧客企業の本社部門(情報システム部、DX推進部など)が投資判断や導入プロジェクトの指揮を行うことが多く、本社機能が集中している東京は、営業活動や受注後の打ち合わせ、導入後のサポートの点で有利です。
(2)人材確保のしやすさの点では、首都圏が大学、大学院卒業者の割合、絶対数ともに際立っており、コンピューターサイエンスの素養のある学生や営業、コンサル志望の学生など、IT産業と相性のよい人材を新卒で採用できる多くの機会があります。エンジニアの転職市場も非常に活発です。
2020年以降の新型コロナウイルスの流行によってリモートワークが普及、定着し、ITエンジニアの地方分散が期待されているところです。しかし、現状の統計を見る限り、その大きな「うねり」はまだ観測されていません。2025年の国勢調査や、2027年の就業構造基本調査の結果はどうなるでしょうか。
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