2021年、29歳のときにトランビでレンタルスペースを購入した華井氏も、同年代の成約者と同様に、後に独立を果たした一人だ。大学卒業後、東京の複数企業でWebマーケティングやプロダクトマネジメント職に従事していた華井氏は、「コロナ禍のタイミングでM&Aを検討し始めた」と話す。
「2017年から業務委託でWebマーケティングの副業をしていましたが、コロナ禍に入って案件が減少したことからM&Aを検討し始めました。そもそも副業の最大の目的は、会社員では得られない経験やスキルを積むためで、報酬は二の次でした。ずっと『何者かになりたい』という焦りがあって、経営者になりたいとも思っていました。そんな背景から、自然とM&Aに関心を持ったんです」(華井氏)
M&Aであれば、副業という限られたリソースでも、既存のアセットを活用してスムーズに事業を立ち上げやすい。さらに、これまでの評価に基づいて事業の方向性を定めたり、素早く検証できたりする点も魅力だったそうだ。
そして、自身のスキルとの相性や参入障壁、いざというときの撤退のしやすさ、市場成長性などを考慮した結果、「レンタルスペース事業」を購入した。福岡にある同施設は、赤字状態で売り出されていたものの立地が良く、運用面の改善次第で収入増が見込めると判断したためだ。
「成約金額は100万円以下で、交渉した価格で購入できました。元々、打ち合わせなどビジネス用途で使用されていた施設ですが、それに加えて、YouTubeの配信や撮影、マッサージの練習など別の用途でも利用できるよう、各所に改善を加えました」(華井氏)
内装は、それほど予算をかけずに洗練したイメージに整えたほか、撮影向けの機材もそろえた。また、競合と比較した自店舗のポジショニングを明確化して、SEO対策を強化するなどWebマーケティング施策も行った。その結果、運営から3カ月で売り上げが倍増し、単月で黒字になることも出てきた。狙っていた新規顧客の獲得を、想定より短期間で実現できたという。
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