華井氏は、福岡のレンタルスペースを購入したのと同じタイミングで、池袋の物件を借りてゼロからレンタルスペースの立ち上げも経験している。M&Aでは経験できない空間作りやオペレーション構築を経験し、ノウハウを積むことを目的としていた。
自身の視点を生かして内装設計した同施設は、CM撮影や誕生日会に使われるなど着実に人気を獲得。池袋という土地柄、コスプレイヤーやカメラマンの利用も多い。そこで、コスプレ関連の情報サイトの運営やイベント開催も手掛け、文化としての魅力発信や利用者増にも取り組んでいるそうだ。
その後は、2023年にレンタルスペース事業を軸に起業し、現在は都内を中心に6施設を運営する。経営者になるという目標を実現して、経験と資産を積み上げているところだ。
華井氏のように、赤字事業を個人が購入するケースは珍しくないと片山氏は言う。
「赤字と一言で言っても、改善の余地がある場合や節税のために赤字にしている場合があり、そうした点に目を付ける方は多くいます。M&Aだと機材や備品類など一式が安く手に入ることもあり、初期費用を抑えながら素早く改善策を講じて、赤字事業でも利益を出す人は少なくありません」(片山氏)
過去の経営状況は重要だが、「黒字事業だから購入後も同様に利益が出る」と安易に判断するのは失敗につながりやすいという。
「黒字だからと売り手が言うことをう呑みにして、詳細の確認やメンテナンスを怠るなど手抜きをしようとすると失敗しやすい傾向があります。赤字であれ、黒字であれ、事業の課題を見極め、収益を上げるために努力を重ねる人は成功しやすいですよね。また、『うまくいかなかったときにどうするか』という想定が事前にできている人も成果を出しやすいと思います」(片山氏)
M&Aでは、備品類だけでなく、顧客リストや以前に得た口コミなどの評価をそのまま引き継げることも多い。それらは当然アドバンテージにはなるが、さらなる改善を加えなければ、成果につなげにくいのが実情のようだ。
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