日本の大学生の生成AI活用は日常化している一方で、大学側の整備は追い付いていない。ICT市場調査を手掛けるMM総研(東京都港区)が、国内の大学生・大学院生2463人を対象に実施した「大学生の生成AI活用状況と利活用意識に関する調査」で明らかになった。
生成AIの活用状況を見ると、学生の利用率は78%で、そのうち93%が便利と感じているという。大学生の生活に深く浸透している様子がうかがえる結果となった。 しかし、大学のAIガバナンスについては、「ルールがある」と回答した学生は59%で、学生用の生成AIを整備している大学は、11%にとどまった。
現状では、多くの学生が個人向けの生成AIを持ち込む「BYOAI」(ビーワイオーエーアイ、Bring Your Own AI)が標準的な状態になっているようだ。
生成AI活用についてルールのある大学に通う学生は、課題作成や論文作成、学習計画や就職活動など、質問した全ての項目でルールがない大学に通う学生よりも生成AIの利用比率が高いことが分かった。
さらに、大学が生成AI活用ルールを整備しているかどうかで、学生の活用度と意欲に差が出ている。今後の生成AI利用動向について尋ねると、「授業や課題提出で生成AIを積極的に活用したい」と回答した人が49%、「就職活動で生成AIを活用することは重要だと思う」が51%、「大学生のうちに生成AIのスキルアップをしておきたい」が66%と、ルールのある大学の学生は、ルールのない大学の学生を10〜20ポイント程度上回っている。
また、ルールがある大学の学生の53%は「大学に公認の生成AIがあった方が良い」と回答した。
大学生は著作権保護について、どう考えているのか? 米OpenAI社が9月に発表した動画・画像生成AI「Sora2」は、日本のゲームやアニメに似たキャラクター画像を生成してしまう問題が指摘され、国内外のコンテンツメーカーが著作権侵害の懸念を示してきた。
これに対し、OpenAIはコンテンツ側からのオプトアウト申請を前提とする立場をとっており、権利侵害の責任はないと反論している。この方針に対して、「反対」と回答した学生が37%で「賛成」を10ポイント上回った。技術や利便性だけを優先せずに、権利保護やモラルを重視する傾向がうかがえる結果となっている。
大学側がAIベンダーの利用規約や著作権保護方針を選定評価に含め、利用するサービスを絞り込んだとしても、学生の活用姿勢は大きく揺らがないとみられる。実際、著作権保護方針への賛否が異なっても、活用率に顕著な差は確認されなかった。
研究成果や著作物を扱う大学では特に、BYOAIのみの運営では情報漏えい対策や権利保護、将来的には評価への活用などを続けることには限界が見え始めている。MM総研は「AI活用定着に向けBYOAIに頼らない基盤戦略を整備し、大学運営にとっても学生にとっても安心・安全なAI活用と情報基盤運用を目指す好機」と分析した。
調査は11月、国公立大学810人、私立大学1653人、合計2463人の大学生を対象にインターネットで実施した。内訳は学部生2293人、大学院生170人、博士課程17人。
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