自治体DX最前線

「GIGAスクール構想」立ち上げで陣頭指揮 文科省「文教政策トップ」に聞く:日本のデジタル教育を止めるな(1/4 ページ)

» 2025年06月10日 08時00分 公開
[関口和一,ITmedia]

 スウェーデン教育政策のアナログ回帰などを取り上げ、メディアは教育デジタル化の弊害や課題を報じている。2019年末から整備されたGIGAスクール環境の端末1人1台化の仕様に対し「特定メーカーへ誘導があったのではないか?」などいろいろなことが取りざたされた。

 教育デジタル化の大きな転換点となった「GIGAスクール構想」はなぜ必要だったのか。第1期が終わり、その評価はどうか。これから日本の学校がめざすデジタル活用とはどのようなものか?

 審議官としてGIGAスクール構想立ち上げの陣頭指揮をとり、現在は文部科学審議官である矢野和彦氏に、MM総研代表の関口和一氏がインタビューで迫る(関口氏の発言を――としています)。

(右)矢野和彦 文部科学審議官、(左)MM総研代表取締役所長の関口和一氏。矢野氏の経歴は以下の通り。1994年に文部省入省。2019年1月、文部科学省大臣官房審議官(初等中等教育局担当)。2021年9月に文部科学省大臣官房長。2023年8月、文部科学省初等中等教育局長、2024年7月 文部科学審議官。徳島県出身、59歳

GIGAスクールの成果と課題 「1人1台端末」の舞台裏は?

――GIGAスクール構想の第1期が終わり第2期になったところで、これまでの事業をどのように評価していますか。

 「学校の風景が大きく変わりつつある、あるいは変わった」と評価できるのではないかと考えています。ハード面の話になりますが、それ以前は3人に1台という整備目標でしたが(注1)、1人1台の端末がある風景が当たり前になりました。

 3人に1台では「常にPCやタブレットを授業に生かす」という風景ではないわけです。そこに大きな転換がありました。

 文部科学省もGIGAスクール構想を立ち上げる当時「ICTに対して本気じゃなかった」と言うとちょっと言い過ぎかもしれませんが、2008年頃に「スクールニューディール構想」がありましたが、予算の減額もあり、やや中途半端な感じになってしまった。

 2019年1月に初等中等教育局の担当審議官になると、与党や政府部内のさまざまな会議で「いつまでたったら(学校の)ICT環境が良くなるんだ!」という声を浴び続けました。デジタル化が進まないことに対するマグマが世の中、与党内にも政府部内にも相当たまっているなと強く感じました。

編集(注1)スクールニューディール構想によるGIGAスクール構想以前は、毎年およそ1805億円の地方交付税措置が続き、端末を3人に1台環境を目標とするなどの整備が続けられてきた。その当時は1人1台化の予算が下りるなど確信している人は誰もいなかったという。

――1人1台端末とともに、インターネット環境も整備していきましたね。

 GIGAスクール構想を立ち上げる当時、われわれ文科省は学校につながる回線速度の100Mbps程度を「超高速インターネット」と本気で呼んでいました。

 GIGAスクール構想のGIGAは、Global and Innovation Gateway for ALLの頭文字をとっているとしていますが、実はこれは後付けで、「インターネット回線をMbpsからGbpsへ」という狙いも当然ありました。メガからギガ、10Gbpsが1つの到達点と考えていました。

 実際、1Gbpsから始めて10Gbpsに拡張できるインターネット回線を整備しようということとなりました。この点は残念ながらまだ課題があると思っています。

――1人1台の端末とインターネットは、学校にどのような良い変化をもたらしているのでしょうか?

 多様な学びの進展、個別最適化への対応、学びの複線化などです(図1)。授業内のグループワークで全員の進捗をリアルタイムに把握するといったことも当たり前になりつつあります。

 これが、全ての学校や授業で実現できているわけではないことは、皆さんご存知の通りです。しかし1人1台の端末環境がない時代は、これをめざすことすらできなかった。

 その他にも外国籍の子どもとのコミュニケーション支援や、授業の配信、他校との連携など、こういった風景がそんなに珍しくはなくなっていることは明らかだと思います。

図1 GIGAスクール構想後の学校の姿(文部科学省の提供資料)
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