筆者はホワイトカラー業務のすべてがAIに置き換わるとは考えていません。むしろ企画や交渉、意思決定、セールス、組織調整など、人対人の領域は重要性を増していくはずです。これらの仕事は「状況を読み取る力」や「相手の感情」に基づいた判断が求められ、AIの情報処理だけでは補いきれない人間関係のマネジメントが求められるからです。
一方で、人対人の領域が残るとはいえ、ホワイトカラーワークだけにこだわるのは賢明とはいえません。将来的にはAGI(Artificial General Intelligence:人工汎用知能)の登場によって、人間同士の調整やコミュニケーションでさえ、AIによって代替される可能性があるからです。だからこそ私が提案したいのが、「ホワイトカラー×ブルーカラー」2軸でのリスキリングです。
では、具体的にどのようにホワイト×ブルーカラーの2軸でリスキリングを進めていけばよいのでしょうか。
まず、ホワイトカラー層にとって大切なのは、現場に足を運ぶ機会を増やしていくことです。実際の現場仕事を見て、現場担当者と対話し、どこに人手が必要なのか、どんなタスクが属人化しているのかを把握していきます。こうすることで、現在のポジションにいながら、生の現場ニーズがつかめます。この取り組みは、自分自身のリスキリング方針(設備管理資格の取得、補修スキルの習得など)に大きな影響を与えることになるでしょう。
また、ブルーカラー層にとっても2軸のリスキリングは大きな意味を持ちます。現場仕事は今後しばらく人手需要が続くと見込まれていますが、長期的にはAIロボティクスの普及によって雇用リスクが生じる可能性があります。すでに自動運転車によるロジスティクスや、AIカメラや搬送ロボットなどを活用したスマートファクトリー・ダークファクトリー(無照明デモ稼働する完全自動工場)の導入が進んでいる国・地域もあります。つまり、ブルーカラー領域も「永続的に雇用は安泰」というわけではないのです。
だからこそ、これからのブルーカラー層も現場スキルに加えて、マネジメント力やITリテラシー、交渉・調整力といったホワイトカラー領域のスキルを磨くことが大切になります。例えば、エッジAIやIoTデバイスの管理・保守をできるようになることで、ホワイトカラー職への転換、さらには独立・開業といった多様なキャリアの選択肢を手にできるのです。
このように、ホワイト・ブルーどちらか一方に偏るのではなく、双方のスキルを横断して積み上げていくことこそ、AI時代において最もリスクヘッジの利いたリスキリングといえるのではないでしょうか。
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