銭湯が激減している。全国公衆浴場業生活衛生同業組合連合会によると、2025年の銭湯数は1562軒。ピークである1968年の1万7999軒から9割減となり、10年後の2035年には1000軒を割り込む可能性もある。
東京商工リサーチは自社の企業データから、7期連続で売上高・最終利益が判明した主な銭湯運営会社37社を分析した。その結果、コロナ禍前の2019年の37社の売上高合計は275億3400万円、利益は3億7060万円だった。
コロナ禍の影響が出た2021年は売上高が237億3100万円に落ち込み、利益は2億800万円の赤字に転落。2022年には赤字額が5億8100万円まで広がった。当時はコロナ禍で入浴客が減少した上、物価高が直撃し、各都道府県が値上げを実施した。一方で「サウナブーム」が沸き起こり、2023年には売上高・利益とも大幅に改善、V字回復を果たした。
2025年の売上高は296億3500万円(前期比7.4%増)と3期連続の増収となったものの、利益は58.1%減の8億8100万円と、大幅に減少した。
東京商工リサーチによると、関係者は「都道府県により状況は異なるものの、相次ぐ値上げによる入浴者の減少を危惧していたが、理解してくれる人が多く、想定よりは減らなかった」と話しているという。
ただし大阪府600円、東京都550円など、入浴料金の上昇は確実に銭湯への客足に影響を及ぼしている。大規模で設備が充実するスーパー銭湯との価格差が縮まり、燃料費などコストが上昇しても値上げが難しいエリアが出てきたようだ。値上げ希望と、避けたい業者の二極化も進行している。
コストアップ→値上げという単純な構図だけでなく、施設の老朽化や後継者問題も複雑に絡み合う。業種柄、ランニングコストの抑制には限界があり、改善されない利幅は設備の改修余力に直結する。経営者が高齢で後継者がいない場合、廃業も視野に入れざるを得ない。
銭湯を取り巻く環境は厳しいが、サウナの充実やオリジナルグッズの販売、銭湯後の瓶ジュースの充実、インバウンド観光客にも目を向けるなど、関係者は模索を続けている。
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