「LLM(大規模言語モデル)の技術は一般化されて考えられすぎている。得意不得意はあるし、従来のテクノロジーが全部置き換わるかというと、そうでもない」──。人事労務クラウド大手SmartHRの芹澤雅人社長は、AI時代のSaaS経営についてこう語る。
登録企業数7万社超、従業員データ数で国内最大級の人事プラットフォームを築いてきた同社は、2025年を「AI活用の本格化の年」と位置付ける。業界では「SaaS is Dead」論が喧伝され、AIがSaaSを不要にするとの見方も広がる。だが芹澤氏は「一般化しすぎない方がいい」と冷静に構える。エンジニア出身の経営者が、SaaSの内側で10年を過ごしてきた視点から語るAI時代の生存戦略とは。
2025年初頭、米Microsoftのサティア・ナデラCEOが「SaaS is Dead」と示唆したことで、ソフトウエア業界に波紋が広がった。AIエージェントが業務を代行する時代、従来型のSaaSは不要になるのではないか──。大手SaaS企業の社員からも「うちの会社は大丈夫か」と不安の声が漏れた。
この議論の背景には、SaaSの進化をめぐる2つの方向性がある。一つは「AI-Powered SaaS」。既存のSaaSにAIを組み込み、機能を強化するアプローチである。もう一つは「Headless SaaS」。AIがインタフェースとなり、SaaSは裏側でデータとビジネスロジックを提供する形態だ。名刺管理のSansanが自社データを外部のAIから参照できる仕組みを発表するなど、大手の動きも分かれ始めている。
業界が岐路に立つ中、SmartHRの芹澤氏はどう見ているのか。「正直、何言ってるんだろうなという感覚だった」。率直な言葉が返ってきた。
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