すでに施行されたものでは、育児・介護休業法の改正(2025年4月・10月施行)への対応は済んだだろうか。「3歳までの子」を持つ従業員を対象としていた残業免除措置が「小学校就学前」まで拡大されるほか、2025年10月からはテレワークや時短といった柔軟な働き方の選択肢を用意し、従業員に選ばせることが義務化された。
就業規則の変更はもちろん、社内イントラにある申請フォーマットの更新も必要だ。古い書式のまま申請されてトラブルになるケースは後を絶たない。さらに、制度が変わっても現場の管理職が「また休むのか」という顔をすれば、制度が有名無実化する。ハラスメント防止とセットで、制度趣旨を管理職に刷り込む研修が不可欠だ。
その他、カスタマーハラスメント対策が「努力義務」から「義務」へと格上げされる見込みだ。「お客さまは神さま」という一昔前の考えは捨て、あくまで対等に接するとともに、「対応をお断りする基準」を明文化する必要があるだろう。
加えて、実際にカスハラ被害に遭った従業員をどうケアするか。産業医やカウンセラーとの連携フローを構築するのは、総務の管轄領域だ。
ここからが本丸だ。というのも、工場労働をモデルに、1947年に制定された労働基準法を、令和の働き方に合わせてアップデートする議論が進んでいる。具体的には、2026年を目処に、以下のテーマが法制化される可能性がある。
終業から翌日の始業まで一定時間(例:11時間)の休息を確保するのが、勤務間インターバル制度だ。現在は努力義務だが、これが義務化されれば、シフト管理や残業体質にメスを入れることになる。
ただ、法改正を待つ必要はない。自社の従業員が実際には何時間のインターバルを取れているのか、今のうちに勤怠データを分析しておくとよいだろう。「実は多くの社員が8時間しか空いていない」という実態があれば、法改正時に業務が崩壊する。今のうちから是正勧告を出すのが「攻めの総務」だ。
テレワークの普及により、あいまいになった労働時間の管理が厳格化される見込みだ。就業時間外の業務連絡を拒否できる「つながらない権利」についても議論されている。「休日のチャット連絡は原則禁止」「緊急時以外の返信は不要」といった社内ルールを、法改正前に先行して作り上げるとよい。従業員のエンゲージメント向上に直結する重要なテーマだ。
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