仕事を休んでリスキリング、「人手不足で無理」は本当? 企業に求められる“発想の転換”とは(2/3 ページ)

» 2025年12月19日 07時30分 公開
[三好一葉ITmedia]

「代わりがいない」は思い込み?

 実際に長期休暇制度を運用している企業の1つが、2022年に「キャリアデザイン休職」制度を取り入れたJR東日本だ。

 同制度は、最長2年の無給休職を可能にする制度で、私費就学やワーキングホリデー、資格取得のための実習、育児・不妊治療など、「本人のキャリア形成に資すると会社が認める場合」であれば取得できる。2024年3月時点で約200人が取得した。

 「社員の成長につながり、復職後に活躍してもらうことで、会社の持続的な成長にもつながる」と同社は制度の狙いを説明する。「これまでは退職しなければ選択できなかった自己啓発やキャリア形成を支援することで、離職リスクの低減につながる要素もあると考えている」(JR東日本)

 制度の上で離職の必要がなく、さらに教育訓練休暇給付金により収入面での心配もなくなれば、社員側の取得のハードルは大きく下がるといえるだろう。

 とはいえ、企業が実際に二の足を踏む理由として大きなものは、「人手が足りず回らない」という意見だ。しかし、これは「誰かが抜けたら社内でカバーする」という前提に縛られているためであり、「外部から補充人員を入れる仕組みを作る必要がある」と河合氏は指摘する。

 「欧州では、見合ったスキルを持つパートタイム人材を外部から補充することが一般的です。仕組みをきちんと作っているので、産休や育休でももめ事は起こりません。日本では“非正規=安価”が前提になっていますが、欧州のパートタイム人材は、それだけのメリットを与えてくれるわけですから当然高給ですし、選択肢もたくさんあります」

photo 欧州ではパートタイム人材の補充も一般的という

 では、結局はその国の仕組みの問題なのか。河合氏は、「(日本は)国の姿勢が曖昧だ」と指摘しつつ、企業のトップ層における意識改革の重要性を強調する。

 必要なのは、「残った人で穴埋めしなくては」という発想を変えること──欧州のように、非正規という枠を活用するのも1つの案だ。

 コロナ禍の際には、「仕事がなくなったタクシー運転手さんが、運送業を手伝う』といった協業の取り組みもあった」(河合氏)

 「日本企業は『だからできない』という考え方をしてしまいがち。ですが、『できるために何をしたらいいのか』という考え方をしてほしいと思います」

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