組織においてリーダーは最も大きな責任を負う半面、最も大きな権限も持っています。そのため、リーダー一人で全ての意思決定を完結させることも可能です。
つまり、参謀の役割として最初と最後に挙げた「ビジョンの実現」と「社内外との橋渡し」は、強権発動すればリーダーが単独でも実行できるのです。対外的に都合の悪いことには“かん口令”を敷き、リーダーのイメージ通りに振る舞うよう社員に求めれば、会社の運営自体はできるでしょう。しかし、「視野の拡張」については一筋縄にはいきません。
リーダーの中には学びながら時に自省し、自力で視野を広げられる稀有(けう)なタイプもいます。しかし、視野の限界は自身では測りきれないものです。権力の座にいると慢心し、油断が生じます。自身の状況を客観的に把握できなくなると、誤った方向へ進んでしまったとしても気付きにくく、軌道修正は容易ではありません。
また、価値観の多様化が進む現代においては、SDGsをはじめとする社会的利益の観点も無視できない要素です。会社の活動が社会的利益にかなっているのか検証する役割として、CPO(Chief Philosophy Officer、最高哲学責任者)の必要性が取り沙汰されることもあります。
さらに、AIの急激な発達といった予測困難な要素もあり、会社が目指す最適なWhatを設定する難易度は高まってきています。視野を拡張できず、リーダーが道を誤った時、軌道修正する参謀がいなければ、会社が破滅に向かっていても止められない可能性があります。
参謀は会社の命運を左右する存在と言えるかもしれません。
一方、J・R・R・トールキンの小説『指輪物語』で、側近・グリマの甘言が毒のようにセオデン王の心をむしばみ、国がさびれた様子が描かれたように、参謀がリーダーを惑わせて組織を誤った方向に導いてしまう場合もあります。
リーダーへの忠義心の有無を縦軸、会社への忠誠心の有無を横軸にとると、参謀は大きく4つのタイプに整理できます。
リーダーへの忠義心も会社への忠誠心もある場合は「バランス」タイプです。会社にとってメリットがあることであっても、リーダーの意向とは異なっている場合には、オブラートに包んで指摘するなど、バランスよく振る舞います。
リーダーへの忠義心はあるものの、会社への忠誠心がない場合は「イエスマン」タイプです。会社にとってのメリットは脇に置き、リーダーの言うことが全てという姿勢で唯々諾々と従います。リーダーにとっては心地よい存在ですが、会社にとって良いとは一概に言えません。
リーダーへの忠義心はないものの会社への忠誠心がある場合は、「お目付け役」タイプです。会社にメリットがあると思えば、リーダーに対し耳の痛いことでもズケズケと指摘します。そのためリーダーにとっては目の上のたんこぶに映る場合もありますが、会社にとっては有益な存在と言えるでしょう。
リーダーへの忠義心も会社への忠誠心もない場合は、「面従腹背」タイプです。表向きは従いますが、必ずしも忠実に実行するとは限りません。参謀としての立ち位置を守るために、役割を果たしているように見せかけることに腐心します。
これら4タイプを見渡すと、「面従腹背」タイプは明らかにマイナスの存在であり、会社に害をなす毒参謀です。また、「イエスマン」タイプもリーダーの判断が正しければ機能するかもしれませんが、リーダーが道を踏み外した際に軌道修正できないため、やはり毒参謀となり得ます。
「お目付け役」タイプは会社にとっては有用ですが、リーダーに過度なストレスがかかるとうまく機能しない恐れがあります。その点、「バランスタイプ」は無難な存在です。ただ、リーダーへの忠義心が強すぎると、遠慮してしまうかもしれません。
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