中小零細企業の「静かな退場」が広がっている。帝国データバンクが実施した調査によると、2025年に休業・廃業、解散した企業は6万7949件。前年(6万9019件)から1.6%減少したものの、過去10年で2番目に多い水準となった。
そのうち約6割が「資産超過」、約半数が「黒字」のまま市場から姿を消している。企業の退出は、単なる業績悪化だけでは説明できない局面に入っている。
休廃業・解散に伴い、影響を受けた正社員は少なくとも累計9万3272人に達し、2016年以降で最多となった。売上高の消失額は約2兆4909億円に上る。
休廃業となった企業を見ると、資産が負債を上回る「資産超過型」が63.4%を占めた。直前期決算が黒字だった企業は49.1%と、2016年の調査開始以来初めて5割を下回った。物価高や人件費の上昇が収益を圧迫し、損益が悪化した企業が増加しているようだ。
規模別では、小規模企業の退出が目立つ。資本金100万以上1000万円未満が44.7%で最多となり、コロナ禍で一時的に抑え込まれていた休廃業が、支援策の縮小とともに表面化した。
休廃業・解散の背景には、エネルギー価格や原材料費の高騰、人手不足に加え、経営者の高齢化、後継者不在といった複合的な経営課題が挙げられる。2025年の休廃業時の経営者平均年齢は71.5歳と過去最高を更新し、70代以上が6割超を占めた。事業承継が進まず、体力的な限界から「続けない決断」を下すケースも少なくないようだ。
一方で、近年は「円満な廃業」を後押しする環境整備も進んでいる。事業再生ガイドラインやM&Aを活用し、第三者に事業を引き継ぐ「前向きな廃業」という選択肢も広がった。
しかし、その恩恵を受けられる企業と、そうでない企業の差は広がりつつある。収益力が低く、設備投資や人材確保も難しい零細企業では、支援策にアクセスできないまま市場から退出する例も目立つ。
帝国データバンクは「人手不足の解消や後継者選定といった従来からの課題に加え、利上げによる金利負担増も重なり、経営環境は一段と厳しさを増す」と分析する。業績回復や収益体質の強化が遅れた企業や、後継者問題・事業改革などビジネスモデルに課題を抱えた零細企業を中心に、退職金の支払いなど企業体力に余力がある段階で、周囲に知られぬまま事業を畳む「静かな退場」が、2025年を上回るペースで増加する可能性がある。
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