なぜエース社員が、たった数百円のために交通費をごまかすのか できる社員ほど陥る心理的なワナ「キレイごとナシ」のマネジメント論(3/5 ページ)

» 2026年01月19日 10時05分 公開
[横山信弘ITmedia]

将来を嘱望されたエース社員に何が起きたのか

 冒頭で紹介したエース社員の話に戻ろう。

 彼女の営業成績は社内でも群を抜いていた。その活躍ぶりは社長の耳にも入るほどで、評価も極めて高かった。「将来、最年少で課長に昇進するかもしれない」とまで言われていた。本人もその昇進に向けて、日々努力を重ねていた。

 そんな彼女は、一体何をしたのか?

 例えば、実際はバスで移動したのに、私鉄を使ったことにして申請する。実際に支払った額より高い交通費を受け取るのが目的だ。1回あたりの差額は数百円程度。しかし、それを繰り返すことで、年間約2万円を不正に受け取っていた。

 確かに金額は小さい。しかし問題は「意図的にルールを曲げた」という事実である。一度この線を越えると、信頼は一気に崩れる。成果や実績がどれほどあっても、ルール違反は別物だ。

 発覚後、上司は彼女に厳重注意を行った。しかし本人は幾分不服そうだったという。おそらく「たかが2万円程度で」と思ったのだろう。

 「自分はこれだけ会社に貢献している」

 「このくらいは許されてもいい」

 そのような感覚があったのではないか。まさにモラルライセンシングの典型例である。

「これだけ貢献しているのだから、少しくらいいいだろう」が組織を滅ぼす

 結局、彼女は退職した。不正の事実を知っていたのは、上司と総務部の一部の社員だけだった。しかし、本人は居心地が悪くなってしまったようだ。将来を嘱望されたエース社員は、自らキャリアを閉ざしてしまったのだ。

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