訪日客は実は「これから減る」でも……JTB「10年で営業利益5倍」強気戦略のワケ(1/2 ページ)

» 2026年01月20日 08時00分 公開
[中根ほづ美ITmedia]

 コロナ収束後、成長を続けていた訪日市場に陰りが見え始めている――。そんな中、旅行大手JTBは10年で営業利益5倍増を目指すと発表した。その背景には、旅行需要の増減のみに左右されない事業構造へと変革する戦略があった。

photo01 JTB 代表取締役社長執行役員の山北栄二郎氏(編集部撮影)

 同社が公表した2026年の訪日旅行市場トレンド予測によると、旅行者数は前年を下回って推移する見込みだ。コロナ禍後の回復過程において伸びを見せていた訪日需要の成長が頭打ちとなること、さらには中国・香港からの需要減が見込まれることが背景にある。

photo03 訪日旅行需要予測数値

 また同社の別の調査では、2026年の国内旅行者は延べ人数3億700万人と予測されおり、コロナ禍前の2019年比103.4%と同水準だった。一方で、海外旅行者の予測は延べ人数1550万人で2019年比77.3%にとどまる予測だ。

 訪日・海外旅行市場に逆風が吹く中、同社は1月15日に実施した10カ年の長期ビジョン「OPEN FRONTIER 2035」を発表した。

 記者発表会にて代表取締役社長執行役員の山北栄二郎氏は、長期ビジョンにひもづく2035年の収益規模の目標として、取扱額2兆5000億円を掲げた。これは2024年度実績の1兆6838億円の約1.5倍の数値だ。営業利益は、2024年度実績の149億円から約5倍となる750億円を目指す。

photo02 長期ビジョン実現に向けた収益の目標(プレスリリースより、以下同)

 この状況下で、JTBは2035年度の利益拡大に向け、どのような道筋を描いているのか。

人の流れが止まっても稼げるか? 事業構成の転換

 同社はビジョン達成に向け、「人流に依存するビジネスからの脱却」と「収益構造の安定化」を掲げ、事業ポートフォリオそのものを見直す。

 山北社長は事業ポートフォリオの変革について「グローバル事業」「非人流ビジネス」「ストック型事業」の割合を増やす計画だと説明した。

photo04 事業ポートフォリオの変革

 訪日インバウンド事業や現地でのイベントプロデュースなどを行う「グローバル事業」の比率は、事業利益ベースで、2024年の14.0%から50.0%まで拡大する方針だ。同社は2025年9月にドバイ支店を設立し、中東市場で法人事業を強化する動きも見せている。

 特定の国・地域に注力するのではなく、各エリアで適切なビジネスを伸ばしていく考えだという。

 例えば米国においては、企業が主催する大規模な会議やイベントに関するMICE事業を拡大していく方針だ。

 「非人流ビジネス」は同20.0%から25.0%に拡大予定。非人流ビジネスとは、プラットフォームの運営やデータ活用支援など、人の動きに左右されない事業を指す。昨今の変動が大きく不確実性が高い社会において、人の流れが止まった場合に、ビジネスが完全に止まってしまう状態から脱するための試みだ。

 また、同じく不確実性が高い現代社会への対応として、不動産やインフラなど、ストック型のビジネスを11.0%から30.0%まで拡大する。

 「旅行ビジネスは、その時の短期間で利益を回収することを繰り返すビジネスモデル。今後も当社にとって旅行ビジネスは重要な存在であることは間違いありません。今後それに加えて、不動産やインフラなど、仕組みに投資して、長期的に利益を生み出すビジネスの割合を増やしていく」(山北社長)

 また、同社は2025年9月に訪日インバウンド戦略を発表し、2030年までに、2025年度比で取扱額約2.7倍、売上総利益約2.9倍を目指す計画を明らかにしていた。

 その後、中国・香港からの需要減といった事態になったが、現段階ではこの目標は変更せず、今後、この需要減がどの程度長期化するかを見極めた上で判断するとしている。

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