ここまで現場に行く理由を論じてきた。しかし、本稿の主張はAIを否定することではない。むしろ逆だ。AIがあるからこそ、現場で得た暗黙知を素早く形式知化し、次の仮説に変え、また現場に向かえる。形式知と暗黙知の融合サイクルが、かつてないスピードで回せるようになったのだ。
この関係を理解するために、武道で古くから用いられてきた「守破離」の概念を参照したい。守破離は、武道や芸道で古くから用いられてきた成長段階の概念だ。
守:師の教えを忠実に学ぶ段階。基本の型を身につける。
破:学んだ型を意識的に破り、自分なりの工夫を加える段階。
離:型から離れ、独自の境地に至る段階。借りものではない、自分だけの知見を持つ。
AI時代の最大のブレイクスルーは、この「守」をAIが担えるようになったこと。具体的には以下の通りだ。
守(AIで形式知を学ぶ):業界の基礎知識、フレームワーク、過去の事例。AIに聞けば、体系的に学べる。
破(現場で自分なりの気づきを得る):AIの知識を「仮説」として現場に持ち込む。想定と現実のズレから、独自の気づきが生まれる。
離(AIで言語化し、自分だけの知見にする):現場で得た暗黙知を、AIとの対話で言語化する。かつては長い経験を要した境地を、AIが加速する。
重要なのは、AIの答えは「守」に過ぎないということだ。そこにとどまっていては他の人と同じ場所にたどり着くだけであり、「破」は現場に行く人間にしかできない。そして、かつては長い修行の末にようやく到達できた境地「離」へ、AIの力で加速できるようになった。
きっかけは「やばくないですか?」の一言 アトレのAI活用リーダーが語る、全社を巻き込むコツ
「失敗したデータこそ宝」 AI面接官に全社向けAIツール、キリンHDが気付いた全社DXの真髄
DX最大の壁は「過去の成功」──花王が“必勝パターン”をあえて捨て、大ヒット商品を生み出せたワケ
「出社の意義」とは? 業務を“3000項目に分解”して考えたNTT子会社のIT活用オフィスCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング