その答えが、ジェットブリューの構造にある。コップの縁にバッグを固定し、抽出中に浮き上がらないようにした。さらに、お湯の中で上下に動かすことによって、フィルターが膨らんだり、縮んだりする。これによって、粉とお湯がいい感じに接触し、わずか10秒で完成するというわけだ。
……と、このように説明すると「簡単につくれたんだね」と思われたかもしれないが、ここに至るまでの道のりは平たんではなかった。
開発が始まったのは、2017年である。そこから、試行錯誤の連続だった。フィルターの目を粗くすれば、抽出は速まるが、粉が外に出てしまう。細かくすれば、味が出にくくなる。フィルターの目の粗さ、粉の粒度、紙の厚みなど。数ミリ単位の調整が続き、完成までに約4年を要した。
商品が完成したのは2021年。まず、投入したのは家庭用ではなく、業務用だった。中でも導入が進んだのがホテルで、評価されたのは味以上に「粉が飛び散らない点」だった。客室向けアメニティとして置けば、床やシンクを汚さずに済み、後片付けも容易になる。清掃のしやすさは、ホテルにとって大きな価値だったのだ。
一方、宿泊客からは「自宅で使ってみたい」という声が広がった。その後、キーコーヒーはECサイトで販売し、2025年9月にはスーパーなどにも販路を広げた。
ただ、一般向けに売り出すにあたって、社内からは「本当に売れるのか」という不安の声もあがった。従来のドリップバッグと違って、構造がやや複雑である。初めて使う人から、不満の声が出てくるのではないか。実際、そうしたコメントが届いたものの、それを上回る手応えをつかんでいる。購入層が変化したのだ。
従来のドリップバッグ購入者は、50〜60代の女性が圧倒的に多いが、ジェットブリューでは30〜40代の女性が目立つ。同社のドリップバック(商品名「ドリップ オン」)と比べると、30〜40代の女性が1.6倍ほど多いという。
この背景について、開発担当者は「新しいものを試みたい。速くてもちゃんとしたコーヒーを飲みたい」という層に、うまくササったのではないかと見ている。
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