サウジの小売業界を分析するに当たっては3つのポイントがあります。政府主導のSaudi Vision 2030に基づく「国の変化」、「生活者行動のデジタル化」、そして「事業者の投資」です。
Vision 2030は、石油依存を減らし、経済と社会を多角化する国家プロジェクトです。2016年4月にムハンマド皇太子が発表し、経済多角化・投資環境整備・デジタル化推進を「国家のロードマップ」として提示しています。
小売の文脈に引き直すと、次の変化が同時に起きています。
まず、人口構成の特殊性があります。総人口約3350万人のうち過半数が30歳以下と非常に若く、Snapchat、TikTok、Instagramなどのグローバルプラットフォームを日常的に使いこなします。デジタルネイティブ世代が消費の主役であり、EC・アプリ・キャッシュレスへの抵抗感が低いのです。
次に、消費文化の独自性があります。酒類が禁止されているためコーヒーショップが社交の場として機能しています。
また、会社員や公務員の勤務形態も日本とは大きく異なり、午前7時半から午後2時半までの勤務が一般的で、昼食は午後4時頃、夕食は午後9時以降という生活リズムです。街中では午前中から日本でいう昼時は人が少なく、夜は人であふれるという感じでした。
3つ目に、急速なインフラ整備があります。2024年12月にはリヤドで同国初の無人自動運転メトロが開業しました。全長176キロ、6路線85駅のネットワークで、クレジットカードでの乗車が可能です。都市開発・観光・イベント拡大で「来街」と「消費」が増え、モールと食品小売の役割が厚くなっています。
電子決済の普及も著しいです。小売取引に占める電子決済比率は2025年時点で約8割に達しています。
生活者を観察していると、Apple Pay、Google Payのタッチ決済を使っている人を多く見かけました。これは隣国のUAE(ドバイ、アブダビなど)も同様です。
筆者のサウジアラビア滞在中、モールやメトロはもちろん、街中の個人商店やレストランも含めて全てクレジットカードのタッチ決済で済み、現金は全く使いませんでした。とはいえ100%ではなく、タクシーなどはクレジットカードが使えるか確認する必要があります。
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