社会保障費が170兆円規模まで膨張する日本では、もはやワラにもすがりたいほどのピンチだ。ウォーキングによる医療費削減を国民運動とし、仮に1人当たり10万円の削減効果があるとすれば、これはかなり大きい。
日本の社会保障費がここまで膨張した背景の一つに、「医療を受けたほうが得」というインセンティブがある。現役世代のときにガッツリ社会保険料を払っているので、高齢者も現役世代もちょっと熱が出たり、腰が痛くなったりするとすぐに病院へ行って薬を処方してもらう。「払い損」にならないよう、自分もフルで医療サービスを受けたいのだ。
これは福祉国家として素晴らしいことだが、人口減少が進んで社会保障が膨張している国では「破滅」を早めるだけだ。泥酔やタクシー代わりに救急車を利用する人がいるように、「払い損」を避ける人が医療サービスを使い倒すことで、本当に高度医療が必要な人、命にかかわる病やけがで緊急性のある患者が不利益を被ってしまう恐れもある。
しかし、そこで自制を呼びかけても「なんでオレだけ損をしなくちゃいけないんだよ、これまでたくさん社会保険料払ってきただろ」となるのが、人間だ。
こうした事態を避けるには、「健康になったほうが得」というインセンティブを設けるしかない。現在、「トリマ」などのウォーキングアプリが増えているが、ほとんどは「ポイ活」止まりだ。
これからの超老人国家の場合、「医療費を使わない人」は今よりも非常にありがたい存在で、社会に貢献していると尊敬もされるはずだ。そうした「医療費を使わない人」こそ本来、減税などの「インセンティブ」を与えてもいいのではないか。
バカバカしいと思うかもしれないが、ウォーキングで医療費削減という国民運動は、日本人にピッタリだ。
思い返していただきたい。コロナ禍でステイホームやマスクをしない者を「非国民」としてさんざん糾弾したように、われわれの社会は「同調圧力」が異常に強い。
「ウォーキングをしない人は医療費を増やしている」というムードを広めれば、さらに日本人が好きな「絆」や「がんばり」を訴求すれば――。案外、自分たちでもビックリするくらい医療費が削減されるのではないか。
もちろん、これは大きなビジネスチャンスにもなる。ウォーキングと観光を組み合わせた「ウォーキング・ツーリズム」は少ない投資で大きな経済効果を得られるとして世界で注目されている。例えば、観光客があまり来ていない地域を歩くと高いポイントが得られて、現地の飲食店や宿で使えるようなシステムを全国に普及すれば「地域おこし」にもなるし、東京・京都・大阪への過度な集中の緩和にもつながるだろう。
これからの円安、減税、積極財政と環境が激変していく中で、「地に足がついたビジネス」にも目を向けていくべきではないか。
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル』
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受
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