ただし、今回の銀相場は単純な価格変動の荒さだけでは説明できない。なぜなら、値動きが激しくなったとしても直ちに下の値段に落ち着くのではなく、確実に底値が切り上がっているからだ。
今回の銀価格の高騰において、市場予測を最も大きく狂わせたのは「生成AI」に関連した新たな需要の出現である。
具体的には、AIチップの電力キャパシティーが高まるにつれて、従来型の「はんだ接合」から銀による接合が主流になりつつあるのが主要因だ。
はんだ(主にスズ)の融点は220度と低く、高圧かつ長時間の稼働が予見される基盤での接合においては劣化や再融解のリスクがある。
この課題を解決するために採用されたのが「銀焼結」技術である。ナノサイズの銀粒子を用いたこの接合技術では、融点は962度にも達するため熱に強い。さらに、一般的に銀はスズの約7倍の熱伝導率を誇り、効率的なAIデータセンターの稼働も同時に可能とする。
その結果、AI時代におけるシステムの安定性や信頼性を支える生命線として「銀」の需要が拡大しているのだ。
他にも、AIの学習プロセスにおける高速データ通信も銀需要を押し上げている。性能と安定性を最優先するAI関連企業にとって、銀はいくら高くても買わざるを得ないレベルのインフラ的な資材へ変貌したのである。
2025年11月に米国が銀を重要な物資リストに加えたことに続き、2026年1月には中国が銀の輸出を規制したことも銀の価格高騰に影響を与えた。
日本企業にとって、もはや銀は単なるコスト項目の一つではない。特定の産地や精錬ルートに依存するリスクを排除し、国家レベルでの資源確保と連動した「調達の多様化」が、経営の最優先課題となる可能性がある。
宝飾品業界については、金よりも銀の方が値上がり幅が大きいことから、銀製の宝飾品が相対的に割高となるため、逆風となるだろう。一方で、産業用のような実需面に関しては、銀の使用量は性能競争のためにしばらくは増え続けることが予想される。
供給リスクの波は銀から銅、そして他のレアメタルへと確実に波及しつつある。資源制約が成長の足かせとなる昨今、企業はかつてないほど、貴金属供給の安定化を経営の最優先事項に据える必要があるだろう。
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