なぜ“深夜の書店”に若者が集まったのか 紀伊國屋書店「夜通しフェス」完売の舞台裏(2/5 ページ)

» 2026年02月15日 08時00分 公開
[小林香織ITmedia]

盛りだくさんの「深夜フェス」

 JR新宿駅東口から徒歩3分ほどの場所にあり、1階から8階まで売り場を構える国内最大級の書店、紀伊國屋書店 新宿本店。広大な空間を生かしてサイン会やトークイベントなど年間300件以上のイベントを開催し、売り上げは国内の書店でトップレベルだ。そんな同店で深夜フェスを初開催した狙いを、星氏は次のように話した。

 「書店ならではの空間の価値をフィジカルに体験してほしいと考えました。紀伊國屋書店としては書店数を増やしており、業績は好調ですが、業界全体では『書店数の減少』や『業界の衰退』が指摘されています。そんな中で書店の盛り上がりをアピールしつつ、新たな体験でリアル書店の価値を広く届けたいと思いました」(星氏)

国内最大級の紀伊國屋書店 新宿本店の内観(筆者撮影)

 普段、書店に足を運ばない人にも訪れてほしいという狙いから、インパクトのある「オールナイトフェス」として開催することに。ライブトークやパフォーマンス、本発見ツアー、ミステリーイベントなど「書店はこうあるべき」という常識を取っ払った特別企画を多く盛り込んだという。

 「営業時間内はお客さまへの配慮からできないことも、閉店後であれば空間を自由に使えます。若年層の方にも来店いただきたい思いがあり、夜通しのフェスとして開催することにしました」(星氏)

キノフェスに出演したゲスト一覧(紀伊國屋書店提供)

 プログラムのメインは、作家や著名人のライブトークだ。運営には博報堂が参画し、同社と紀伊國屋書店でそれぞれゲストをブッキングした。自社だけでは招へいが難しいゲストを呼ぶことで、新たな顧客層にアプローチしたいと考えたという。

 ゲストには、俳優・作家の松井玲奈氏、ジェンダー研究の第一人者である社会学者の上野千鶴子氏、YouTuberでマルチタレントの佐伯ポインティ氏、実業家の古川健介(けんすう)氏、占い師の天満灯香氏など、多彩な顔ぶれがそろった。

階段の踊り場に設置された、ミステリーイベントの演出(筆者撮影)

 さらに、初の試みとして書店空間を使った「ミステリーイベント」も用意。手掛けたのは、イベントの企画・運営などを担うアンルートで、安藤氏が制作総指揮とシナリオを務めた。詳しくは後述するが、実際に店内を歩き回りながら謎解きをするもので、普段の書店では体験できない非日常的な演出も取り入れた。

 深夜フェスということもあり休憩フロアも設けられ、床に敷けるピラティスマットやサウナマットを貸し出すなど、参加者が疲れにくいよう配慮していた。

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